三菱重工がUAEドバイから火星探査機の打ち上げを受注! 苦闘を続けてきた日本のロケットビジネス

 たとえば、今回受注した火星探査機は比較的軽く、H-IIAの性能にとっては役不足である。ロシアやインドには、H-IIAよりも打ち上げに適した、そして安価なロケットが存在する。UAEとロシア、インドの関係も悪くなく、実際にこれまで何度も、UAEの衛星がロシアのロケットで打ち上げられている。  また、この受注の発表が行われた同日には、JAXAとアラブ首長国連邦宇宙機関との間で、宇宙活動に関する研究開発・利用、人材育成などの分野で相互協力を深めるための機関間協定が結ばれている。  したがって、他よりも価格が高いことを埋め合わせできる、別の取り引きが同時に行われたか、もしくは、あるいは同時に、国レベルでのトップセールスが行われた結果、受注を果たせた可能性が考えられる。

ゲリラ戦から脱却できるか

 このように、これまでH-IIAロケットが獲得してきた受注は、他のロケットが行っているような純粋な商業契約ではなく、ゲリラ戦とも言うべき立ち回りの結果、ようやく果たせたものばかりである。  しかし、静止衛星を中心とした商業打ち上げ市場は、主に欧州の「アリアンスペース」、米国の「スペースX」、ロシアのロケット企業だけで9割を占めているような状況であり、高価な上に信用が浅いH-IIAにとっては、こうした戦法を取らなければ、受注のひとつすら取れなかったというのが実情である。  ただ、こうした戦い方はいつまでも通用するものではない。今回のような火星探査機の打ち上げ機会は毎年あるわけではない。また、アリラン3号やハリーファサットのような、主となる衛星の打ち上げ時期と運よく被り、加えてロケットの余力の範疇に収まる大きさの衛星というものは、そう何機もあるわけではない。  今後、アリアンスペースやスペースXなど、強豪勢から直接契約を奪い取れるくらいにならなければ、日本のロケットの未来は、これまでのように、閉じたものになってしまうだろう。  H-IIAは苦戦しながらも、じりじりと粘り強く運用が続けられ、現在までに30機が打ち上げられ、そのうち29機が成功。また7号機以降はすべて連続で成功している。他のロケットと比べるとまだ少ないが、30機の打ち上げ実績は、ひとつの大きな一里塚を越えたと言える。
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開発中の「H3」に掛かる期待と今後の課題
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