H-IIAでコストダウンに成功するも、まだ市場に入り込めず
H-IIから性能はそのままに、コストを約半分に抑えた改良型ロケット「H-IIA」 Courtesy of JAXA
2001年になり、H-IIから性能はそのままに、コストを約半分に抑えた改良型の「H-IIA」が誕生した。三菱重工らは巻き返しを図るものの、そのころには他のロケットはさらに安くなっており、H-IIAが入れる余地は少なかった。
こうした事情から、H-IIやH-IIAは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星や、日本政府が運用する情報収集衛星など、もっぱら国内の官需の衛星ばかり打ち上げていた。しかし、その需要は少なく、打ち上げ回数は毎年2機前後しかなかった。
打ち上げ回数の少なさは、信頼性の評価も難しくした。たとえば100回中100回成功するロケットと、1回中1回成功するロケットとでは、確率はともに100%にはなるものの、その数字の意味には大きな違いがある。他のロケットは毎年10機前後は打ち上げられているにもかかわらず、H-IIAは毎年2機前後だと、「どちらが優れているか」を対等に比べることは難しい。
さらに、打ち上げ回数が少ないため、ロケットの大量生産によるコストダウンができず、信頼性も確立できず、さらにロケットの製造や運用を担う工学者や技術者の育成も難しいという、厳しい状況が続いた。
こうした状況は、官需衛星の打ち上げを続ける際にも悪影響となるものであり、日本のロケット産業にとっては、たとえ欧米のロケットに勝てずとも、1機でも2機でも海外からの打ち上げ受注が欲しいところだった。