「スキー場崩壊の象徴」ガーラ湯沢に再びテコ入れを始めたJR東日本に勝算はある?

スキー場に流入する新しい3つの層にマッチするガーラ湯沢

 スキー離れが進んだこの状況下で、91億円もの損失処理を行い、痛い目を見たJR東日本が、ガーラ湯沢に再び力を入れ始めたのはなぜなのでしょうか。確かに「JR SKI SKI」キャンペーンの力も大きいとは思いますが、ブーム時と違い、広告投下すれば上手くいくというわけではないはずです。それゆえに、ブームが去った後はキャンペーンを止めていたわけですし、2006-2007年に冬季五輪に合わせてキャンペーンを行った際の乗客数の伸びも現在の数字には及ばず、キャンペーン自体も単年で終わっています。  そこで注目してみたいのが、上記で触れた日本のスキー人口です。全盛期には1800万人以上いたので現在はその半分以下と衰退感は激しいものの、近年は少し底打ち感が出てきているのは、下記の3つの新たな利用層の流入が考えられます。 (1)2007年から定年退職を始めた団塊世代が「スキー」に戻ってきた (2)90年代に「スノーボード」を始めた世代が家族連れで楽しんでいる (3)訪日外国人が日本観光の一環として「雪遊び」にやってくるようになった  これらは本来、どのスキー場にも共通するプラス要因ですが、特にガーラ湯沢にとってはチャンスと言えます。なぜなら、この新たな利用者層に共通して響く魅力をガーラ湯沢が他のスキー場よりも擁しているためです。 ①リーズナブル  例えば、平日であれば往復自由席+リフト券で8600円から利用できます。これは片道切符が6570円、リフト券が4600円することを考えると相当安いです。加えて、6歳以下の未就学児に関しては、往復指定席も僅か1000円で利用できます。また、JR東日本は外国人観光客向けに、関東エリア3日間乗り降り自由の専用切符(10000円)を販売しているのですが、こちらのエリアにもなんと最近ガーラ湯沢が追加されました。そして、ガーラ湯沢は日帰りでも楽しめるため、宿泊代も節約可能です。 ②アクセスの快適さ  まず単純に新幹線の座席で1時間ちょっとというのは、自動車やバスでの移動に比べればやはり快適と言えます。特に、ブームの暗黒面を味わった世代にとってはなおさら魅力的ではないでしょうか。そして、当然小さい子を連れて行く上でも、狭い車内に長時間いるよりは機嫌を損ねることも少なそうです。  また、我々からすると「とはいえ、東京~新潟って日本横断じゃないか」という距離感を感じますが、かえってそういった先入観のない外国人観光客には「東京から1本75分で日本の雪山観光もできる」というのは、旅行の非日常体験としては苦にならないレベルなのかもしれません。 ③スキーイン・スキーアウト  日本の典型的なスキー場の姿といえば、まずゲレンデがあって、その麓にホテルや飲食街があるという感じですよね。ただ、いざ滑りに行こうと思っても重いスキー板を担いでゲレンデに向かって坂を登り、その上、子連れであれば雪道で転ばないかも気にしなくてはいけないことも多いです。  しかし、長期滞在を前提としたリゾート文化を背景にした世界のスキー場では、ゲレンデの中に様々な施設を備えて、スキーで滑り込んで、スキーで出て行く「スキーイン・スキーアウト」が主流になっています。元々、駅の2階の改札を出ると、チケットカウンターやレンタルショップといったスキーセンター施設、準備したらそのまま山頂行きのゴンドラに乗っていけ、1階には「SPAガーラの湯」もあるガーラ湯沢は、その潮流にもマッチしています。
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ガーラ湯沢は日本のスキー場の未来を切り開けるか
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