東京オリンピックへの妄執に取り憑かれた連中が、国民に早く忘れて欲しいこと

エンブレムのデザイン騒動も忘れてはいけない

 2015年には大きな変更がもう一つあった。五輪のエンブレムデザイン盗用問題だ。2015年7月24日に都庁で大会の公式エンブレムがお披露目された。しかし、その5日後の7月29日にはベルギーのリエージュ劇場のエンブレムと、また7月30日にはスペインのデザイン事務所の作品と瓜二つとされて国際的な問題となった。特にベルギー側からは8月3日にベルギーのリエージュ劇場側から使用差し止め要求が届く。デザインの発案者である佐野研二郎氏は「(自らのデザインは)世界に類のないものと確信」と独自性を主張したものの、大手飲料会社が佐野氏デザインの販促キャンペーンによる景品を取り下げたり、佐々木氏の他の展覧会のポスターにも酷似しているものがあったなどと国内からも疑問や批判が出始めた。すると有名無名のデザイナーが、新たなエンブレム案をネットなどにアップし始める。2015年9月1日に、東京五輪組織委員会は、佐野デザインのエンブレムの使用を取り下げる方針であることが報道された。その後、公募により別のデザインが採択された。  変更ではもうひとつ。2019年に9月末から10月にかけて開催されたドーハでの世界陸上で、日中は40度を超える酷暑を避けるために深夜0時スタートで行なった女子マラソンで、棄権する選手が4割もでてしまう。そして、果たして7月下旬の東京でマラソンをするのは適当なのかという世論が盛り上がった。また、季節的に台風の上陸の可能性もある。朝4時スタート案も出たものの、最終的にはオリンピックの花であるマラソンと、競歩に関しては東京での実施を避け、北海道札幌で行われることになった。近年の異常気象で東京の7月は40度前後になる日もある。なぜ、7月から8月の選手と観客にとっても過酷な時期に開催するのか?という世論は根強くある。  さらに、ここでは詳細には触れないが、2020年を前にして、日本のスポーツ慣行における問題が次々と提起された。スポーツにおける選手とコーチの関係、しごきやパワハラ、団体の不透明な金の動きや代表選考過程などがクローズアップされた。また選手個人でも不倫問題や遠征した海外での買春問題などで活動休止に追い込まれる有力選手が相次いだ。池江選手や松山選手、大坂選手、内村選手などの活躍や感動的なストーリーだけでないのだ。

ドタバタ続きのあとに起きた「コロナ禍」

 こうして様々な問題を抱えながらも2020年を迎えた。しかし、そこを新型コロナウィルスが襲う。日本政府は中国を含む海外からの人の流れをなかなか止める決断ができず、1月末には中国人団体旅行客を乗せたバス運転手やガイドの感染などが伝えられ、2月は大型クルーズ船。ダイヤモンドプリンセス号での集団感染に限られていたが3月に入ると日本国内にもウィルスは広がり公立学校の全国一斉休校、コンサートやスポーツ大会などの大型イベントの中止、外出自粛などが呼びかけられる。欧米などでは死者が急増し、ロックダウンが行われる中、果たして2020年の夏にオリンピックができるのだろうか?という世論が急速に高まった。  3月24日に延期が決定される。多くの専門家は1年での感染終息は非現実的で2年の延期は必要と指摘し、また日程を変更するのであれば、もう少し涼しい秋に開催する方がいいのではないか?という意見も出る中で、3月30日には、1年延期で大会日程もそのままで2021年7月からと発表された。  折りしも、森友加計桜に公文書の捏造、隠蔽、破棄、さらに検察官の定年延長問題で支持率に陰りが出ていた安倍晋三首相にとって、自民党総裁任期と衆議院の解散の期限も2021年の9月から10月にかけてという政治日程が予定されており、政権の都合で無理やり1年としたのではないか?という声も上がった。  こうして2020年に東京大会が開催されることはなくなった。安倍首相は8月末に辞任し、官房長官だった菅義偉氏が新首相となった。
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セクシズムやルッキズムが支配する「五輪妄執」集団
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