東京オリンピックへの妄執に取り憑かれた連中が、国民に早く忘れて欲しいこと

後を引きいまだ未解決の「疑惑」

 3年後の2019年1月にも、フランス ル・モンド紙が「フランス司法当局は竹田氏がオリンピック招致のために、賄賂の支払いを許可したと疑い」(2019年1月11日)と報じ、国際的な疑惑は晴れていないことが再確認された。同日、イギリスBBCは「東京五輪招致汚職容疑、竹田会長をフランス当局が訴追手続き」、ニューヨークタイムス紙は「オリンピックの信頼を揺るがす新たな打撃」、スペインの主要新聞ABC(アベセ)も「マドリードに勝つために(日本は)不正に200万ドルを支払った疑い」と報じた。ほか世界各国の主要メディアが、過去ではなく現在進行形の疑惑として取り上げた。そして、パリの予審判事が竹田会長に対する「予審手続き」を開始した。これは、フランスの法律で正式な刑事捜査の開始を意味する。とうとう、竹田会長は海外渡航すれば逮捕される可能性もあると考えたのか国外から出ることを控える状況になってしまった。こうしてオリンピック開催まで1年と少しの2019年3月にIOC委員もJOC会長も退くことになる。  この後、日本ではこの疑惑のその後の進捗状況が報道されなくなったが、2020年6月8日の日本テレビ系のニュース番組では、フランス司法当局は贈賄の疑いがあるとして竹田前会長への捜査を進めていると報じている。  カネが渡ったディアク氏はその後、別の疑いでも嫌疑をかけられた。日本は2020年大会のために本格的なロビー活動を行うこととしたものの、招致したい都市が直接、投票権のあるIOC委員に直接、アプローチすることはルール違反となっている。だからこそ、コンサルトと称するグレーな人たちが暗躍する余地が出ているわけだ。1票10万ドル(1100万円)とも言われる汚職の相場も報じられ、何ともオリンピックアスリートの感動のストーリーとはかけ離れたダーティな話にうんざりした人も少なくないはずだ。  分かっているだけで2億2000万円のコンサルタント料が日本から支払われたことは明らかだ。日本オリンピック委員会は、この大金でどんなコンサルタント業務を頼んだのだろう。その詳細は今も明らかになっていない。

真っ赤な嘘だった「カネのかからない五輪」

 猪瀬元都知事の「カネのかからない五輪」は、招致が決まった段階でほとんど口にされなくなった。既存の施設を最大限に利用するとした当初の都民、国民への説明はほとんど反故にされてしまった。各競技団体は、オリンピックの機会に自分たちのために新施設を作って欲しい。箱モノ行政が批判され、ほとんどの公共施設が整ってしまった日本での大型プロジェクトであるため建設業界も血眼になる。  さらに、都内の交通、道路などの整備、長年の懸案でもある築地市場の豊洲移転問題まで絡み、予算はどんどん膨れ上がっていく。そこに、待ったをかけたのが小池百合子新知事であった。歳出の見直しを求めた。2016年の都知事選挙で、膨れ上がる開催費用に対する都民の不満を敏感に察知し批判していたのだ。都知事選挙での「一兆、二兆、三兆と。お豆腐屋さんじゃないんです」と五輪予算へ強烈な批判をして当選した。小池都知事は妥協を重ねたものの3施設に関しては見直しを強く求めた。  整備費が当初の321億円から683億円に膨らんだ水泳会場「オリンピック・アクアティクスセンター」はやめ、近隣の東京辰巳国際水泳場を改修、増築案を提示。ボート・カヌー会場の「海の森水上競技場」は69億円から491億円になっており、宮城県の長沼ボート場などへの会場変更を模索する必要性も訴えた。復興五輪の意味合いもあるわけだ。176億円から404億円となったバレーボール会場「有明アリーナ」も検討されるべきとした。世論も小池都知事を後押ししたが、大きく見直すことはできなかった。そして、この時に選挙の時に懸念された大会開催費用が3兆円がほぼ現実となり(東京都の負担は約8000億円)、リオデジャネイロ、ロンドン、北京と近年のどのオリンピックより莫大な予算のかかる大会となってしまったのだ。この経済的負担は果たして都民が受け入れるのであろうか。  費用の問題で再び物議を醸したのが、神宮前に建設される東京オリンピックのメインスタジアムである。2012年7月のデザイン募集時の計画予算は1300億円。ザッハ案になった後、国会でその建設費用が3000億円の見込みであることが明らかになり問題となる。批判を受け2014年の夏の段階で外形デザインは大きく変更され、延べ床面積も20%も削減された。費用は1625億円とされた。しかし、その1年後には開閉式屋根をやめても約2600億円かかることを再び明らかにされた。シドニー五輪では640億円、ロンドン大会の760億円、リオ大会が550億円などと報じられ明らかに金のかけすぎだと批判された。  この批判を受けて2015年7月17日に当時の安倍首相はメインスタジアムの白紙撤回を決定。その後、木のぬくもりのある隈研吾設計のものとなり、建設された。このため、元々の計画ではメインスタジアムは2019年のラグビーワールドカップ東京大会で使われる計画であったが、使用を断念せざるおえなくなった。  大会の後にもスタジアムの維持とその費用問題は続いていく。
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エンブレムのデザイン騒動も忘れてはいけない
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