宮城県で何が起きているのか? 統計から解析する感染者数急増の要因
宮城県の「異変」
宮城県で何が起きているのか
なお、川上浩一理学博士、倉持仁医学博士による共同研究とその第一報については、前回速報を執筆していますのでご参照ください。 また3/16に宮城県では、 2/23のGo To Eat「再開で気の緩み」が原因とされるCOVID-19感染者急増によりGo To Eatを中止するという報道が成されています*。 〈*GoToイート再停止 村井知事「再開で気の緩み」 2021/03/16 河北新報〉 ここでは、宮城県で何が起きているのかについて統計で検討してみましょう。国内統計については、都道府県比較の必要があるため、『東洋経済オンライン「新型コロナウイルス 国内感染の状況」』を用い、図表の引用を行います。 なお本邦では変異株の検出への努力が極めて低調ですが、英国変異株(B.1.1.7)による非季節性第四波エピデミックが始まった今頃になって漸く泥縄で変異株の検出努力が広がりつつあります。宮城県でも案の定、「初の」B.1.1.7発見が報じられました*。既に何度も執筆してきたように筆者は3月中にB.1.1.7は、国内蔓延してドミナント(支配株)になっているであろうと指摘しています。調べなければ見つかりません。 〈* 【速報】宮城県で「イギリス型」変異株を初確認2021/03/19 NNN〉 宮城県の日毎新規陽性者数を見ると、2/12頃に第三波Surge (波、うねり)が一応収束しており、感染者数は1〜2名を底値としています。2/12は金曜日ですので、曜日変動による効果は認められません。宮城県の日毎新規陽性者数は、 2/12を起点として緩やかな増加に転じており、少しずつ増加を継続していました。その増加は、7日移動平均で10日間あたり4人程度ですから、たいへんにゆっくりしたもので、制圧は世界中に前例が多数あります。従ってここまでは制圧から掃討、終息まで台湾、韓国、シンガポール、豪州、ニュージーランド、合衆国東部諸州を前例として、本来はたいへんに効率よくできた絶好の機会でした。 ところが2/26の4人を起点として2/27土曜日から一貫して日毎新規陽性者数の強い増加を示し、二週間後の3/13土曜日には最大値の53人となっています。3/16現在では、やや減少に転じており、39人となっています。後述しますが、その後の報道では更に増加傾向を強め100人前後となり倍加日数*が10日前後となっている可能性もあります。 〈*感染者数=ウィルスが二倍に増えるのに要する時間、日数。30日を割ると非常に危険〉 宮城県の統計は、サンプル抽出率=検査数が過少であり、集計も一括計上があって質がたいへんに低いのですが、新規陽性者数の傾向については、検査不足によるばらつきが目立つものの妥当と思われます。 宮城県における実効再生産数は、1/24の0.99から一貫して減少し、2/14には0.49というたいへんに優れた値を出しています。ここまでウィルスの拡大力を制圧できれば、加えて下水道PCR検査で地区、建物ごとの感染分布を効率よく判定し、プール検査を含む大量PCR検査によって市中感染者を徹底して発見、接触追跡、隔離、治療することで2カ月ほどで県単位でのバブル=安全圏を構築することができました。 新幹線や飛行機などの長距離旅客によって東京などの汚染地域からのウィルスの移入は避けられませんが、マスク着用と社会的距離の徹底に加え、感染者の検査、接触追跡の徹底、感染者の隔離、治療を行うことで地域経済を平時に近づけることは可能であったと考えられます。それが昨年夏までに本邦以外の全世界で得られた社会的かつ科学的知見です。 しかし宮城県における実効再生産数は、2/15から上昇に転じ、2/19以降は、2/27,28を除いて感染拡大を示す実効再生産数1.0を超えた状態であり、26日間のうち過半数の14日間は、たいへんに深刻な状況である実効再生産数1.5を超えています。 この様な状況に陥った2月3月で感染拡大イベントと考えられるのは2/8の宮城県独自対策の終了、2/13,23時過ぎの福島県沖地震と2/23に再開したGo To Eat、英国変異株(B.1.1.7)の蔓延が主として考えられます。これらの感染拡大イベントと統計を比較してみましょう。この3検体の変異株は、英国型でも、南アフリカ型でも、ブラジル型でもありません。(おそらく)国内でE484K変異が生まれ、それが拡がっている、と考えるのが妥当と思います。 https://t.co/dVME2IQFhP
— Koichi Kawakami, 川上浩一 (@koichi_kawakami) March 15, 2021
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