宮城県で何が起きているのか? 統計から解析する感染者数急増の要因

村井知事は令和の牟田口廉也

 さて、ここまででGo To Eatの影響は、あるとすればこれからそろそろ本格化であることを指摘しました。宮城県におけるGo To Eat食事券販売開始は、2/23ですから最速で3/9前後には影響が出始めます。しかし食事券は購入して使わなければ影響はありません。従って、Go To Eat Pointと異なり、分かりにくく、現時点では兆候はあるが詳細はよく分からないと言うほかありません。  本稿執筆中に3/17の宮城県での新規感染者数が107名、3/18の新規感染者数が98名*、3/19の新規感染者数が100名**とNHKによる報じられました。但し、NHKと東洋経済オンラインでは、原典データが異なり差異を生じています***。 〈*新型コロナ 県内98人感染確認 過去2番目の多さ 2021/03/18 NHK 東北〉 〈**新型コロナ 宮城県内100人感染確認 過去2番目2021/03/19 NHK 東北〉 〈**東洋経済オンラインは厚労省、NHKはNHK取材のまとめ〉  東洋経済オンラインでは、3/11〜3/16の宮城県における新規陽性者数は、40〜50名でしたから、3/17以降、大幅に新規感染者数が増えたことになります。既に宮城県は、百万人あたりの新規感染者数(ppm)では全国最悪となっています。  既述の様にエピデミックSpikeが発生している状況下でのGo To EAT再開は愚の骨頂であったわけで、2/20時点での統計からも状況の悪さは自明でした。結局、統計の使い方が分かっていなかった、たとえ絶対値が小さくても統計が意味することが理解できていなかったという事で、まさに「暗愚」の二文字しかありません。  統計とは、数値に一喜一憂するチンチロリンのサイコロの目ではありません。統計として表れる数字は、現実の鏡であり、鏡像としての数字を分析し、現実を再現することが統計の使い方です。  なお、村井知事の発言中で、“「感染が収束していた当時の判断は間違っていなかったと思うが、結果的に患者が増えたことを考えれば、気の緩みにつながった」と説明した”というものがあります。これはとんでもない破廉恥発言です。筆者はこれを読んだとき、インパール作戦で壊滅した第15軍敗残部隊の共喰いまでして帰り着き、最早立ち続けることもできないほど衰弱した将兵の前で行われた牟田口廉也の演説を連想しました。 「兵器がない、やれ弾丸がない、食う物がないなどは、戦いを放棄する理由にならぬ。弾丸がなかったら銃剣があるじゃないか。銃剣がなくなれば、腕でいくんじゃ。腕もなくなったら足で蹴れ。足もやられたら口で噛みついて行け。日本男子には大和魂があるということを忘れちゃいかん。日本は神州である。神々が守って下さる。」  宮城県民に丸腰でウィルスとの闘いを強要する宮城県知事。ご立派なものです。令和の牟田口廉也と命名します。

近隣県はどうか

 宮城県の近隣である岩手、(秋田)、山形、福島県の新規陽性者数統計を見ますと、福島県を除き良好な数値を示しています。但し、極端な検査不足が原因で、市中感染者を相当に見逃していますので、何かを切掛けにすぐに増え始めます。実際、3/10以降、全ての県で見かけ上は僅かですが第四波の兆候があります。筆者はこれをB.1.1.7(英国変異株)による第四波エピデミックの前兆ではないかと強く疑っています。  感染を終息させるには、本来は、感染者数が少なくなったときにこそ新規感染者1人あたり1000人規模の大規模PCR検査を行い、市中感染者を発見、追跡、隔離、治療することを2カ月程度続けることでゼロにする必要があります。その後は、バブルが形成されますが、県外からの移入がありますので、マスク、社会的距離、発症者の即時検査と隔離、徹底した接触追跡と言った本邦以外の全世界で常識となっている対策は継続せねばなりません。近隣国では韓国と台湾、中国が行っていることです。  さて、福島県では興味深い結果が出ました。
福島県における日毎新規陽性者数(人,Raw Data,7日移動平均)2021/01/06-2021/03/17

福島県における日毎新規陽性者数(人,Raw Data,7日移動平均)2021/01/06-2021/03/17/東洋経済オンライン「新型コロナウイルス 国内感染の状況」

福島県における日毎PCR検査人数(人,Raw Data,7日移動平均)2021/01/06-2021/03/17

福島県における日毎PCR検査人数(人,Raw Data,7日移動平均)2021/01/06-2021/03/17/東洋経済オンライン「新型コロナウイルス 国内感染の状況」

福島県における実効再生産数の推移(No Unit)2021/01/06-2021/03/17

福島県における実効再生産数の推移(No Unit)2021/01/06-2021/03/17/1/18以降、社会性Spikeによる影響は無いため実効再生産数の使用は問題ない/東洋経済オンライン「新型コロナウイルス 国内感染の状況」

 福島県でも同様に2月10日頃から新規陽性者数の微増ないし横ばいとなりました。福島県では、2/15に独自対策の解除がなされていますが、その影響は3/1前後に現れたことになります。福島県では、新規陽性者数が、2/26より大きく増加に転じています。2/26の14日前は2/12ですが、誤差の範囲で2/13の福島県沖地震による社会的距離の崩壊が原因と考えて良いでしょう。その後3/3〜3/9をピークとして緩やかに減少に転じていますが、やはり増加圧力があるようです。  福島県でも2/15にGo To Eatが再開されていますが、統計にはその影響は3/1前後に現れたことになります。  PCR検査は、陽性率2%前後と宮城県に比して2倍程度の密度です。但し、その検査資源はクラスタ追跡に殆ど費やされており*、クラスタと関係のない市中感染者は野放しに近かったと考えられます。例えば郡山市の事例ですと3/17迄は、事実上クラスタ追跡のみをしている状態でした。明らかに検査数不足です。 〈* 新型コロナウイルス感染症患者の発生状況や記者会見・対策本部会議の開催状況/郡山市公式ウェブサイト 新型コロナウイルス感染症患者の発生状況〉  実効再生産数の推移も宮城県に比べればかなりマシですが、現状では市中感染者=エピデミックの火種を残すことになります。  やはり福島県においても2ヶ月ほど日毎PCR検査数を2万人にして市中感染者を発見の上で追跡、隔離、治療し、エピデミックの火種を全て潰した上で6月頃から社会を正常化するという台湾、韓国、豪州、ニュージーランド、シンガポール、合衆国東部諸州と同様の手法を用いれば結局は大幅に安上がり且つ、いち早く社会を正常化できます。  福島県は、宮城県と異なりPCR検査数の一括計上などといった統計の品質が極端に落ちることをしていませんので、統計をエピデミックを乗り切る為の羅針盤として使うことがずっと楽です。  現在は、近い将来にわたる効果は限定的ですが、既に第一世代ワクチンが実用化されています。今年第四四半期以降は、本命の第二世代ワクチンの接種開始が期待できますのでワクチンと非薬理的手法の組み合わせで奥州羽越は、年内にも社会を正常化できる可能性は十分にあると筆者は考えます。品質が低いのですが、統計を見る限り、九州、四国、中国、北陸、紀伊など、同様に一足先に社会を正常化できる可能性は十分にあります。  但し、奥州羽越全県の統計を見る限り、B.1.1.7による第四波エピデミックを疑うべき統計の挙動が3月以降に共通していますので、PCR検査の大幅増加と検体の遺伝子解析は必須と言えます。  索敵は最も重要なものです。  今回は、予定を変更して宮城県および福島県をはじめとした周辺各県について述べました。次回は予定通り、本邦統計の異常についての解説に戻りますが、場合によっては台湾の解説と順番が入れ替わるかもしれません。 ◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ44:国内編(1) <文/牧田寛>
Twitter ID:@BB45_Colorado まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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