宮城県において1月に第三波エピデミックSurgeが終息に向かって以降、3月までに何が起きたかを再度列挙します。
2/8 緊急事態宣言に伴う宮城県独自対策(主として時短要請)解除
2/12 日毎新規陽性者数1名 第三波エピデミックSurgeの収束
2/13 日毎新規陽性者数が増加を始める
2/13 福島県沖地震(23時過ぎ) 被害甚大
2/14 実効再生産数0.49で最小値 大量検査、市中感染者洗い出しの絶好の機会
2/15 実効再生産数増加に転じる
2/19 実効再生産数が1.0を超え、感染拡大が明確となる
2/21 実効再生産数が1度目の最大値1.83となる
2/22 宮城県、Go To Eatの2/23再開を国へ要請*
2/23 宮城県Go To Eatプレミアム付食事券販売開始**
2/27 日毎新規陽性者数増加傾向が大幅に増す(17日間で49名増)
3/7 実効再生産数が、2度目の最大値2.22となる
3/13 日毎新規陽性者数が最大値の53名となる
3/16 日毎新規陽性者数39名実効再生産数1.39
3/17 宮城県新規陽性者数107名と過去最多を記録***
〈*
GoToイート食事券の販売 宮城県が23日再開を国に要請へ 2021/02/22 河北新報〉
〈**
【宮城県】Go To Eatプレミアム付き食事券の販売を2月23日(火・祝)より再開!使えるお店は県内約3,900店舗! 2021/02/23 号外NET 仙台市太白区〉
〈***
初の100人超感染 過去最多に 2021/03/17 NHK 東北〉
他に入試などの大型イベントもあり、執筆前に一通り検討しましたが、今回は略します。
さて、重要なのはウィルス曝露後の平均的なイベント日数と統計、時系列を組み合わせ比較することです。ここでいつも使っている、ウィルス曝露後の平均的時系列を図で示します。
COVID-19のウィルスへの曝露=感染発生後の平均時系列は既に判明しています。発症は、感染5日後が中央値ですが、感染性は発症日の2日前から生じ、しかも感染性のピークは、発症日前後1日とされています。このことがCOVID-19が極めて強い感染性を持つ理由の一つです。またB1.1.7(英国変異株)の場合、感染力が在来株に比して70〜100%強いことが最大の脅威とされますが、感染性を持つ期間が発症日の前後に拡大しているとされています。
ウィルスへの曝露後=感染発生後、統計に日毎新規感染者として現れるまでの日数は、国によって異なりますが、本邦では14日前後であり、筆者は12月以降、14日としています。この日数は、国それぞれの検査態勢、医療体制、検査・医療への負荷によって変動します。この14日という数字は、世界的に平均値として使われる場合が多く、標準的と言える数字です。
まず多くの方が筆者へ問い合わせてきた2/23再開のGo To Eatですがこの14日後は、3/9となります。従って2/27からのSpike(棘)とは無関係です。但し、3/9以降に増加率や実効再生産数に増加圧力をかけている可能性は十分にあり、それは今後の推移を見守るほかありません。現時点での筆者の見解は、3月中旬から宮城県における日毎新規陽性者数は、更に強い増加圧力を受けており、Go To Eat再開の影響は強く疑われるというものです。
時系列が前後しますが、2/15〜19にかけて始まった小規模のSpikeについては、その感染発生は2/1〜2/5となります。これまでの本邦や合衆国、英国におけるエピデミックの観測事実から規制解除の一週間前頃から規制解除を見込んでウキウキした市民により活動が活発化し、感染拡大が始まりますので、これは丁度
2/7の宮城県独自対策の解除が原因であったと考えられます。
実効再生産数は、日々の数字を見て一喜一憂するという誤った使い方が横行していますが、この事例のように
傾向の推移を観察し、時系列と照合していれば何が原因かは見いだすことが出来、それにより対策にフィードバックさせることができます。本来はそういう使い方をするものです。
それでは、宮城県を危機的状況に追い込んだ2/27の新規陽性者数増加圧力の大幅増大は何が原因でしょうか。この14日前は2/13です。2/13は、福島県沖地震で、福島第一原子力発電所廃墟だけでなく福島県、宮城県の各都市が大きな打撃を受けた日でもあります。このため市民が避難や物資の購入のために社会的距離の維持をできなかったものと考えられます。基本的に災害復旧では人々の接触が増加します。
災害とエピデミックの関係は、たいへんに難しく、何も起こらないこともあるのですが、後述しますが、今回は福島県の統計も同じ傾向を示しており、2021福島県沖地震は、スーパースプレッダ・イベント(感染拡大イベント)となった可能性があります。このことは、震災時、後の人流だけでなく避難状況、接触状況などを分析する必要がありますが、本稿では行いません。
筆者は、2/8の宮城県独自による独自対策、効果が大きかったのは時短要請の解除を見込んで2月に入り接触、活動が活発化し、2/13の震災後に更に拍車がかかったものと考えています。加えて2/23再開のGo To Eatがエピデミックの火に油を注ぐ事になったものと考えています。
では、2/23の宮城県による
Go To Eatプレミアム付食事券販売再開は、問題なかったのでしょうか。答えは否、
狂気の沙汰でした。
宮城県における実効再生産数の推移は、2/14の0.49を底値として2/15に上昇に転じ、2/19には1.0を超えて1.04となり、2/21には、1.83とたいへんに高い値を示していました。また、2/13に増加に転じた日毎新規陽性者数は、2/20には20人に達し、2/21に11人2/22に2人と粗い動きをしていましたが、これは検査数が全く足りていないことから来る統計の乱れでと考えるべきです。この状態で実効再生産数が1.5を超えている状態はたいへんに危険であり、実効再生産数が定常的に0.5を割り込む状態を少なくとも2ヶ月継続した後にGo To Eatのような経済活動振興事業に着手するべきでした。
宮城県庁におけるGo To Eat再開の最終決定が成されたのはこの頃と考えられ、村井嘉浩知事をはじめ、当事業関係者は、インパールの惨劇を起こした
牟田口廉也*と第15軍司令部と同じ最大級の犯罪的無能であったと言うほかありません。なにしろ、統計に異常と危険がはっきりと現れていたのです。季節は春ですが、まさに「飛んで火に入る夏の虫」そのものの暴挙です。
〈*戦術的にも戦略的にもまったく無意味であったインパール作戦を行い、日本軍を壊滅に追い込んだ牟田口は、その軍事史に残る無能ぶりから英軍にたいへんに「感謝」されシンガポール軍事法廷でBC級戦犯無罪放免であった。勝手に無意味な作戦で日本側の5万人から6万5千人を殺し、戦線を崩壊させ、ビルマ(現在のミャンマー)を失陥させた「英軍の援軍」であった為ともされる。日本側死亡者数は、英軍側推定で、4万人説もある。多くは餓死、病死や動物による食害であり、白骨街道という言葉が残っている。日本側の記録と統計が崩壊しており、実態は不明だが、参加人数と生存者の差で7万2千人の日本側死亡とする場合も多い。
英軍側の戦死者は、1万5千人であったとされる。英軍側の戦傷者は2万5千人であった。英軍側の戦傷・戦病者は、治療による回復、生存、再戦力化できたが、日本側は殆どが餓死、病死、友軍および動物による食害により帰ることはなかった〉
Bar(飲み屋)、カラオケ、屋内外食が、COVID-19において最悪のスーパースプレッダ・イベントであることは昨年5月から指摘されてきたことで、海外では感染拡大防止を最優先し、そのうえで社会的距離を確保した営業、屋外営業、テイクアウト(お持ち帰り)、デリバリー(出前)の振興、さらに補償金や休業補償金・失業手当の延長などの給付を行うことで、外食産業の維持と防疫の両立を図っていますが、非常に難しい政治課題であることは事実です。英国では8月にGo To Eatに類似したEat Out to Help Outという事業があり、当初大成功を誇りましたが、エピデミックの火種となり、9月から始まっていたとされる変異株の蔓延もあって
英国人約13万人死亡の点火栓となる大失政となりました。英国は、冬のエピデミックを経て、世界最悪のCOVID-19累計死亡率となり、11/1からのソフトロックダウンに続く12月からのハード・ロックダウンがやっと解除に向かい始めたところです。英国は、順調に推移して6月末までの規制解除が見込まれています。英国は、Eat Out to Help Out(英国版Go To Eat)でエピデミックに点火して、半年と5万人を超える人命を余計に失ったことになります。
Bar、Karaoke、屋内営業レストラン、パーティは最悪のCOVID-19スーパースプレッダイベントであることは、昨年秋までには、既に科学的に合意された公知事実であり、このことについて改めて説明の要はもうありません。筆者もこれまでにこの件について多くの記事を執筆してきています。
これを無視することは反科学であり、正当性を自ら科学的に立証し、科学的に合意を得なければ全ては棄却されます。Go To Eat政策はまさに反科学行政そのものです。
エピデミック対策では、根拠のない希望的観測や楽観視、索敵の軽視、統計と科学的思考の無視といった旧帝国陸海軍から続く悪弊が大損失と大きな犠牲に直結します。昨年1月来、本邦はその愚行を続けており、謎々効果*がなければとっくに破滅しています。
〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる被害が他の地域、特に米欧に比してきわめて小さい。また、その西側でもアフガニスタンまでは日韓並みの感染率である。中東湾岸諸国から謎々効果は、急速に衰えて行く。
筆者はこの事実に2020年2月末頃に気がつき、同3月には「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ現象を後に”Factor X”と呼称している人たちもいる。米欧メディアや研究機関が注目するものの、謎々効果の原因もそれがどのような現象であるかも不明であった。謎々効果の原因は依然不明だが、この領域では、感染率が現在でもBaseline比較で台湾、ニュージーランドなどでは欧米比1/1000〜1/10000であり、日韓で1/10〜1/20である。
一方で致命率(CFR)は、謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。感染すれば、謎々効果国であっても一定数死亡し、その確率であるCFRは米欧とそれほど大きく変わらない。CFRは、主として医療水準と医療への負荷によって変動している。
謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている。視点を変えると、COVID-19は、欧州、南北米大陸で特異的に猛威を振るっていると考えることができる〉
エピデミック対策の基本は
統計と観測事実です。貧弱な統計であっても今回程度の分析と論評はできます。