すると、院長が現われ渡辺さんに「その被せ物では弱いのでだめだ、やり直してこい」と告げた。てっきり病院間で情報共有がされていると思った渡辺さんはなぜかぶせ物の指示をしてくれなかったのかを聞くと「そんなこと言うのだったらその仮歯でやってやるよ。
失敗するからな、失敗しても文句言うなよ、失敗したらお前のせいだからな」と恫喝を始めたと言う。
渡辺さんが「では虫歯の治療をやり直してきます。材質名がわからないので、依頼書を書いてください」と頼んだところ、「
お前がきちんと聞いてこないのが悪い。今日は治療はしない。依頼書は書かない、帰れ、帰れ」と持っていた
カルテをユニット台にバンバン机に叩きつけながらさらに怒鳴った。
渡辺さんは当時の様子について「最初はなぜ自分が怒鳴られているのかわからなかった。二人きりで怒鳴られたので怖かったです」と語る。
そして、その日は治療を受けられなかったものの、また1万500円を支払い、院長の面談を受けるよう告げられる。渡辺さんはさすがにおかしいと思い、自宅に戻って同居するパートナーの木村さん(仮名)にそれまでの経緯を伝えた。その時に木村さんから「その歯科医はおかしい」と告げられ、渡辺さんは通っていた歯科医での矯正治療の中止を決める。その時、
既に総額で約287万円を支払っていた…。
そして、後日、木村さんが紹介されたむし歯の治療をした歯科医に詰め物について聞いたところ、「確かに、もっと強い詰め物は存在するが、それは全ての矯正が終わった後に付けるべきもので、渡辺さんの歯に入れた詰め物でも特段問題はない」と説明されたという。
その後、木村さんと相談した渡辺さんは歯科矯正の転院を受け容れると表明している歯医医院を回った。そこでまた驚愕の事実が明らかとなる。最初の歯科医師は口の中を見るなり、「
A先生のところだね」と一言。何とその医院には渡辺さんと同じように、
A矯正歯科による施術がおかしいと感じて助けを求めに来た患者が他にもいたのだった…。
渡辺さんはさらにもう1軒の歯科医を訪れる。その歯科医は1件目の歯科医と同じく「
A矯正歯科でしょ。あそこはよく潰れないよね」と言った。そして、コルチコトミーの手術が1分で終わった旨を告げると、「骨を割らなくてはならないコルチコトミ―の手術が1分で終わることはあり得ない。
表面を少しだけ傷付けて手術をしたことにする先生もいるとは聞いたことがある」という更にショッキングなことを言われた。
別の矯正歯科医からもA矯正歯科がおかしいと聞いた渡辺さんは、木村さんと一緒にA矯正歯科を再び訪れた。木村さんが院長に進捗状況と治療がいつ終わるのか聞いたところ、「確実なことは言えないが治療の進行具合からすると大体半分ぐらい。残りの治療にどれぐらい時間が掛かるか確実なことはわからない」との回答が。
そして、院長に紹介された歯科医のかぶせ物が弱かったと怒鳴った件については全面的に否定したが、紹介した歯科医に対してかぶせ物の材質の指定をしていなかったことについては認めた。
渡辺さんはこの時の様子について「私と2人で診療室にいた時とは全く違っていました。足も手もブルブル震えていましたし、威圧的な態度はありませんでした」と話す。どうやら
院長は女性や子供相手だと強気に出ているが、男性が相手だと途端に萎縮してしまうようだ。