ここまで和田氏が意識するコミュニケーションやマインドセットについて伺ったが、ここからは独自のスケジュール管理や手帳術について掘り下げていく。
営業のカリスマとして外資系企業に勤めていた頃のエッセンスを取り入れた「和田裕美の営業手帳」は、今年で発売16年目を迎えるロングセラー手帳だ。
ビジネスパーソンはもちろん、目標達成したいと願うユーザーからも人気を博している。
今では、Googleカレンダーやメモアプリ「Evernote(エバーノート)」などデジタルでスケジュール管理するのが主流になっている。和田氏が手帳にこだわる理由は何なのだろうか。
「もちろん、手帳よりスマホでスケジュール管理した方がしっくりくる方もいます。『感性重視の右脳寄り』か『理論重視の左脳寄り』かで、手帳を使うこと自体合う合わないは出てくるでしょう。ただ1つ言えるのは、手帳は予定を書いた“記憶が残る”こと。これからやりたいことや、思いついたことをメモ代わりにボールペンで書いていくことで、自分が創りたい未来を可視化できる。
まるで自分が作家の主人公になったごとくストーリーを描けば記憶にも残るし、万が一予定がキャンセルになっても二重線で消した“履歴”が残ります。後で遡った時、自分が当時何を考えていたかがわかるのは、手帳というアナログさゆえの良さだと思っています」
GoogleカレンダーやEvernoteといったデジタルツールを活用すれば、手帳いらずでカバンの中もかさばらなくて済む。
また、予定がキャンセルになっても二重線で消した履歴は残らず、書いた跡で手帳が汚くなることもない。
ただ、予定を立てた時の「自分の感情や状況」は、履歴の残れないデジタルツールでは思い出すことができないだろう。
和田氏は過去に使っていた手帳を本棚に並べ、時折見返すことで、昔何を思って行動していたかを思い出しているそうだ。
「ワクワクしていたとき、悲しかったとき、怒っていたとき。その時の感情が字にも滲み出るんですよ。どんな字で手帳に予定やメモ書きしていたかで、どんな思いを抱いて行動していたかがわかる。さらに、予定がまっさらで手帳に文字がない空白のページすらも、当時の様子を語りかけてくる。この感覚はデジタルではあり得ないですし、自分の過去と現在地を見比べられる手帳ならではのメリットだと思います」
嫌なことも良いことも、時間が経つと経験になる。
手帳に悩みごとを書いておけば、後で振り返った際に「どうすれば幸せになるのか」考えるきっかけにもなるだろう。
日々の予定を記すのはもちろん、ふと思ったことや気になっていることを書き留めるなど、うまく手帳を活用してみるといいかもしれない。