なぜ福島原発事故の原因は「地震」ではなく「津波」とされたのか?

福島第一原発事故は津波ではなく、地震の揺れによって起きた!?

地震イメージ3 例えば、オーソドックスに引用されるWikipediaにはこう書かれている。 「福島第一原子力発電所事故は、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震による津波の影響により、東京電力の福島第一原子力発電所で発生した炉心溶融(メルトダウン)など一連の放射性物質の放出を伴った原子力事故である」  他のものも同様で、福島の原発事故は「津波が原因」ということで定説化している。  しかし、これに異を唱える人物がいた。2013年10月4日、岡山市の長泉寺で、元東電技術者の木村俊雄さんによる講演会が行われた時のことだ。  木村さんは「福島第一原発の過渡現象記録装置のデータ解析を終えて、地震による原子炉停止直後に、本来自然循環するはずの炉内の水が止まっていた」という事実を示したうえで、「原発事故は津波が原因ではなく、地震の揺れによって壊れた」ということを示した。 「大学で、学問の形で原発を学んでも、『現場での実務』を知らなければ、福島第一原発事故の真実は見えてこない。メルトダウンは津波ではなく地震で引き起こされた」と木村さんは述べた。

「津波原因説」によって、一部を改修しただけで再稼働へ

 そのデータは2013年8月にようやく公開された福島第一原発の「過渡現象記録装置のデータ」を解析して得たものだ。木村さんは東電で「炉心屋」と呼ばれる仕事をしていて、まさにこのデータの解析を行っていたのだ。 「地震による原子炉停止直後に、本来自然循環してするはずの炉内の水が止まっていた」と木村さんは語る。もともと原発は「フェイルセーフ(なんらかの装置・システムにおいて誤操作・誤動作による障害が発生した場合、常に安全に制御すること)」の思想のもとに設計されている。  たとえ強制循環の電源が失われたとしても冷却水の自然循環だけは残り、冷却能力の半分は残るはずだった。フェイルセーフがちゃんと機能して、自然循環だけでも残っていたとすれば、福島原発事故を深刻にした炉心溶融は避けられていたかもしれない。  ところがデータは、その自然循環さえ残さずに冷却能力を失ったことを示し、「打つ手なし」の状況に陥っていた。津波によって電源が失われる前に、原発の小さな配管が破損して、それによって冷却できずメルトダウンしていくことが確定していたのだ。そのことは炉心から漏れ出した冷却水の放射能濃度からも、人が入れなくなった時点からも確かなことだったという。  つまるところ、原発事故を決定的にしたのは「津波」ではなく、「地震の揺れ」によるものだった。ところが原発は「津波原因説」によって“めったに発生しない事態”とされ、一部を改修することで大丈夫だとされ再稼働を始めてしまったのだ。本当の原因が地震にある以上、地震を防げない以上、再び事故を起こす危険性があることは明らかだというのに。
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隠されていた“不都合な事実”
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