「岩手・宮城内陸地震」の4022ガルでは、あらゆる建築物は耐えられない
これでは計測値に頼って判断することはできなくなる。そこで計測可能な「ガル」という単位が登場する。それは加速度で、「1秒間に変化する速度の変化量」のことだ。重力加速度が980ガルで、ものが飛び上がるにはそれ以上の重力加速度が必要なわけだ。
それに沿って建築物の耐震等級で基準が作られている。これは建築基準法ではなく、「品確法・性能評価制度」にて定められた基準だ。そこではどう書かれているかというと、以下の通りのガル数に相当するそうだ。
【性能表示・品確法で定める強度】
●耐震等級1=建築基準法強度
震度5強=80ガル 傷つかない(損傷しない)
震度5強~7=400ガル 倒壊しない(倒れない)
●耐震等級2=建築基準法の1.25倍
100ガル 傷つかない(損傷しない)
500ガル 倒壊しない(倒れない)
●耐震等級3=建築基準法の1.50倍
120ガル 傷つかない(損傷しない)
600ガル 倒壊しない(倒れない)
となる。
参考に、震度をガル数で示すと以下のようになる。
震度5……80~250ガル
震度6……50~400ガル
震度7……400ガル以上
ところが、最大加速度ガル数で世界のギネス記録を持っているのは2008年の「岩手・宮城内陸地震」で、震源断層の真上で観測された
「最大加速度4022ガル」である。それまでは2004年日本で起きた「新潟県中越地震」で観測された
2616ガルだった。
「岩手・宮城内陸地震」はマグニチュード(M)7.2の地震で、岩手、宮城両県の一部で震度6強を観測。死者17人、行方不明者6人の被害を出した。
ギネス記録をとなったにもかかわらず、それでも「震度7」ではなかった。
ガルとは瞬時の揺れの加速度だが、それにはもちろん「耐震等級3」を取っていても倒壊しない数値が600ガルまでだから、とても追いつかない。「岩手・宮城内陸地震」の4022ガルでは、ありとあらゆる建築物は耐えられない。なにせ瞬間的にとはいえ、ロケットを真上に飛ばすほどの加速度の4倍になるのだ。
原発がどれだけ耐震性を上げようとも、日本を襲う地震には勝てない
いちおう、日本の原発も耐震性を謳っている。主要な部分だけだが、東海地震が予想されている浜岡原発では、かつて「基準地震動」として450ガルだったものを600ガル、800ガル、1200ガルと耐震性能を上げてきている。
しかし2005年に建設された耐震性能の高い浜岡第三原発でも、その後に大きな変更工事はなされていない。
ギネスに対応していないどころか「東北地方太平洋沖地震」の後にも変えられていないのだ。
変わったのは防潮堤の高さだけで、それがどれほど頼りないかは現地を見ればわかる。津波は表面の波だけではなく、底からの海水全体が動くので、とても対応できるはずがない。しかも耐震構造にしたとしても主要部分だけで、すべての部分に耐震性が施されるわけではない。地震動にも津波にも耐えられる保証はない。
4022ガルの場合は、重力の4倍もの加速度がかかって空に飛ぶのだから、それに耐震性ある建物など想定することもできない。
もし原発がどんなに耐震性のある建築物だったとしても、日本を襲う地震には勝てないのだ。