「桜」質疑をいち早く受け止めたのは、ツイッターとデジタル記事だったーーしんぶん赤旗日曜版・山本豊彦編集長との対談を振り返って(第3回)

デジタルの記事に、さらにツイッターが反応

 11月9日の毎日新聞デジタルの記事は、同日朝刊の政治面の記事と比べてたっぷりと字数を費やして、田村議員の質疑を流れに沿って論点整理したものだった。  デジタルだからこそ十分な字数を使って深掘りした記事が書ける、そのようなデジタル記事の強みを生かすべく、毎日新聞が2017年4月に新設した部署が統合デジタル取材センターだ。この統デジの齊藤信宏センター長に、筆者は2019年の夏に取材を行っている。〈参照:【HBO!】メディア不信と新聞離れの時代に、鋭い記事目立つ毎日新聞の「挑戦」 〉  この11月9日の統デジによる記事がネット上で広がる過程で、「桜を見る会」の問題はさらに広く認知されていくことになる。  ここで注目すべきは、このデジタル記事を受け取り拡散する過程においても、ツイッターの利用者は単なる情報の受け手ではなかったという点だ。  例えば、歌人の岸原さやさんのこのツイートを目にした方はおられるだろうか。江畑記者が「桜を見る会」の映像を見て藤原道長の和歌を思い起こしながら記事を書いたように、その記事を読んだ岸原さんもまた道長の和歌を思い起こし、それを本歌取りした和歌を披露したのだ。 ”この世をばわが世とぞ思ふ満開の桜の会を私物化すれば” 「我が世の春」を謳歌しているかのような安倍首相の写真の印象が、この記事を引用リツイートする際に添えられた和歌によって強化される。そうやって新たな意味づけが加えられて、さらに記事が広がる。ツイッターの反応とデジタル記事が相互に作用しながら話題を増幅させていく――その過程の一端をここに見ることができる。  年が明けても国民は「桜を見る会」の問題を忘れず、メディアの追及も続き、予算委員会では「桜を見る会」をめぐる質疑で安倍首相が無理な弁明を重ねる姿がNHKの中継で流れるに至っている。そしてその様子が、さらに映像を伴って、コメントを伴って、ツイッターで拡散されていく。  この過程は、予算委員会を通してさらに展開していくだろうか。筆者ら国会パブリックビューイングは、1月30日の参議院予算委員会における山添拓議員(日本共産党)の質疑を中心に、「桜を見る会」の名簿問題に焦点をあてた街頭上映を2月3日に新宿で行う。山添議員もゲストに迎え、自らの質疑を解説いただく予定だ。 ◆国会パブリックビューイング 「桜を見る会」名簿は公開対象だった  ―山添拓議員と振り返る「桜」名簿問題― 2020年2月3日(月)19時より、新宿西口地下広場 解説:上西充子 ゲスト解説:山添拓参議院議員  ツイッター、デジタル記事、そして国会パブリックビューイング。既存のメディアが深掘りするのを待たずに、新しいメディアが、新しい切り口で、問題を深掘りして見せる。今はその過程にある。 <文/上西充子 図版/国会パブリックビューイング
Twitter ID:@mu0283 うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。また、『日本を壊した安倍政権』に共著者として参加、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆している(ともに扶桑社)。単著『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)ともに好評発売中。本サイト連載をまとめた新書『政治と報道 報道不信の根源』(扶桑社新書)も好評発売中
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