本格的に調べようと思ったときに、山本編集長は、自民党の関係者に取材を行った。そこで聞いた話に、山本編集長は驚く。
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山本:それ(取材)はだいたい、10月のこれ(10月13日のスクープ)が、だいたい(概算要求のあった)9月末の(頃から)、2週間ぐらいやってきたんですけれど。
実は、ある自民党の議員のところに取材に行きましたら、「たしかに自分とこもね、行ってるよ」と。ただ、「自分のところなんか、まあ何人かだ」と。「安倍さんなんかは、前夜祭までやってんだよ。知ってんだろ?」って言われて、こっちは全然知らないわけですよ。
「えっ、そんなことやってんですか」と。「いやいや、すごいよ」と。「何百人って呼んでやってんだよ」と言うんで、「えっ、そうなんですか」っていうんで、「あ、そうか」と。「安倍さんは、そんなに呼んでるのか」っていうのに気づいて。
それで、「いや、そんなことは誰でも知ってるよ」って言うんです。確かに……。
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上西:大手紙の記者なんかはね、当然、知っているわけですよね。
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山本:そうです。知ってるし、なんでかっていうと、「首相動静」っていうのがあるじゃないですか。毎日、安倍首相がどうしましたかと。そうすると今年についても、安倍晋三後援会主催の「桜を見る会」前夜祭がありましたよ、と。で、首相が出ましたよ、とか、あるいは「桜を見る会」の当日に首相が行って……。
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上西:後援会の方々とね。
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山本:ええ。写真を撮って。そういうのは、きちんと載ってるわけですよ。
で、私たちは残念ながら招待されてないんで、知らなかったんですが、「あ、こんなこと、やってんだ」と。で、過去のものを見たら、全部、載ってるんですよ。
それで、「あ、どうも、自民党枠もあるんだけど、安倍首相がそもそもなんだ、と。自分が私物化してんじゃないか」ということで、安倍首相の私物化として、これは取材をやろうというふうに決めて、取材をやり始めたんですね。
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この山本編集長の語りが非常に興味深い。山本編集長は、「桜を見る会」に安倍首相の後援会関係者が多数参加しているということを知らなかった。前夜祭がセットで行われているということも知らなかった。だからこそ、「
えっ、そんなことやってんですか」という驚きがあった。それに対し、
取材を受けた自民党議員は、「そんなことは誰でも知ってるよ」と答えていた。
確かにそうなのだ。「桜を見る会」の様子はテレビでも新聞でも、映像や写真つきで紹介されてきたし、
首相官邸ホームページでも安倍首相の挨拶の場面も含めて映像が公開されている。大手メディアが把握して公表している「首相動静」にも、前夜祭への参加のことも、「桜を見る会」で安倍首相夫妻が後援会関係者と写真撮影していることも載っている。
大手メディアは実態を知っていた。しかし、問題視せずに来た。
山本編集長は違った。
知らなかったがゆえに、驚きをもって受け止めた。そして、これは安倍政権による「私物化」の問題だととらえ、報じるべき問題だととらえた。
そこから、「しんぶん赤旗」日曜版の若手記者も含めた取材・調査チームが立ち上がっていった。
山本編集長の語りを引き続き紹介しよう。
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山本:なんで結果としてこんなに(支出額と招待者が)増えたのかって言って、いろいろ自民党の関係者とかに聞いたら、どうも自民党議員の枠があるというのがわかってきまして、それでその中で、「あ、本当に枠があるのか」と。まぁ、何人か取材したら、どうも枠があると。
それで、私なんかは古典的な記者なんで、自民党関係者に聞いてるんですけれど、チームも結構、若い記者で、インターネットなんかに強い記者がいて、「どうも自民党、枠があるようだよ」と言ったら、ただちにブログとかフェイスブックとかを調べはじめるんです。
そうすると、皆さんが、「行ったよ」とか、萩生田さんみたいに「僭越ながら」と言いながら「お招きした」とか。
要するにみんな、どうもこれは、悪いことじゃないと思っているのか、結構、正直に書いているんです。それが、若い記者なんかが調べたので、どんどん集まってきて、「あ、これはどうも自民党が、組織的に枠を作ってやってるんだ」ということがわかったんですよね。
だから、そこから見えてきたのは、どうも自民党が、税金でやっている公的行事のはずの「桜を見る会」を、どうも後援会員を行かせるという、私物化をしているという実態が見えてきました。
で、こういう私物化ってのは、森友とか加計と同じような構図なんですけど、違うのは、要するに森友とか加計っていうのはやっぱり、秘密を知ってる人っていうのはごく少数なんですよ。でも「桜を見る会」は、結構みんな行ってるから、それでみんな、ブログとかに書いている。だから、関係者が多数いるっていうのが、圧倒的に森友・加計と違う点なのかなというふうに思ってます。
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自民党の議員が後援会関係者を招待することを、議員も後援会関係者も悪いことと思っていないため、ネットの情報は掘り起こすとたくさん集まった。「私物化」というキーワードで取材を進める方針を決めた山本編集長と、ネットの検索に長けた若手記者が、うまくチームワークで取材を進めていった様子がうかがえる。
山本編集長も、ネット検索という手法の必要性をこう語っている。
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上西:ネットをちゃんと発掘できる若い人たちがいたっていうのも強みですよね。
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山本:そうですね。そこはもう、ちょっと私なんか、なかなか難しいんですけど、やっぱりそういう、なんていうのかな、ある意味じゃ、いろんなこういう取材の手法っていうのを、今はやっぱり、使わなくちゃいけないなぁと思って。
そういうブログだとかフェイスブックで、そういうのを発見して、しかも、また後で出てくるかもしれないですけど、安倍昭恵さんの枠みたいなのもあったんです。これなんかも、フェイスブックをたどってやるとか、本当にそれはもう、ちょっと私は、なかなか説明はできないんですけど、そういう手法で積み重ねをやっていってますね。
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