昨年
5月21日の衆議院財務金融委員会の宮本徹議員の質疑では、麻生太郎財務大臣が答弁に立つ場面がある。1月6日の山本編集長との対談では、その質疑の内容を映像で確認した。
下記の動画の16分30秒からを是非、ご覧いただきたい。
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「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング
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井野靖久内閣府大臣官房長:各省庁からの(招待者の)数というものは、資料が残ってございません。
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宮本徹議員:各省庁からの資料は残っていない、それはあえて破棄をしたということなんでしょうかね。
一体全体、予算計上額とも違うお金をどんどんどんどんふやし続けているわけですよ。開催要項では1万人と。だけれども、招待状はどんどんふえていて、その資料も残っていない。こんな説明、国民に対して通るはずがないと思いますよ。
大臣、ちょっと、こんな説明はとても納得できないと思いますが、麻生大臣、いかがですか、予算の執行のあり方として。
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麻生太郎財務大臣:これは、財務省の話というより、執行されている役所はどこですか。内閣府ですか。(宮本議員が「内閣府です」と答える)では、内閣府に聞かれた方がいいんじゃないですか。
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宮本議員:いや、予算をつけているのは。財務省がつけた予算以上のものを内閣府が出しているわけですよ。財務省の査定がなめられているという話じゃないですか。財務省が認めた予算と全然違う使われ方をしている。これは内閣府に聞いてくれという話じゃないと私は思いますよ。
大臣もそこはアンタッチャブルにしなきゃいけないのかな、そういう話なのかというふうに私も思ってしまいますけれども、私、今年のリストは少なくともあるはずだと思いますよ。どの省庁から推薦が何人あったのかというのは残っているはずだと思いますよ。それも、もう破棄しちゃったんですか。
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井野大臣官房長:「桜を見る会」に関しますこうした資料につきましては、1年未満の文書というふうに整理させていただいておりまして、今年の資料につきましても、もう既に開催が終わりましたので破棄させていただいております。
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宮本議員:とんでもない話ですよ。これはちょっと、私、きょうは会計検査院を呼んでいないですけれども、会計検査院にもお願いしなきゃいけないような話じゃないですか。予算と全く違う支出を行って、その書類は、メディアに取り上げられたからかどうか知らないですけれども、恐らく、過去にさかのぼって全部破棄したことにしよう、そういうふうにしているとしか私はとても思えないですよ。
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振り返ってみれば、ここで
宮本徹議員は、今日に至る問題を指摘している。ただし、追及する宮本議員の側に、名簿は廃棄したとする政府側の答弁に対抗するだけの有力な証拠や証言がなかった。ここが、昨年11月8日の田村議員の質疑と異なる点だ。
それはともかくとして、山本編集長はこの質疑を当時、見ていたという。そして、こんな疑問を持ったという。
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山本:この質疑をわたしも見てて、やっぱり非常におかしいなと思っていて、財務省っていうのは予算は非常に厳しいんですよね。でそれが、この間、予算の3倍の支出をして、それを宮本議員に指摘されて、本来ならば財務省がそれはおかしいって言うべきなのを、「いや、それは内閣府に聞いてくれ」と。で、「アンタッチャブルなんですか」っていう。で、そこで何も言わないと。で、やっぱりそこは、アンタッチャブルだったんですよね。
だから、やっぱりそういうのを見て、「何かこれはあるな」と言って、まあ取材を始めようかなという気になったんですね。
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この宮本議員と麻生大臣のやりとりの際、映像で確認すると、麻生大臣のとなりに座っている
上野賢一郎財務副大臣(自民党)が、麻生大臣が答弁を終えて席に戻るときに、
宮本議員の質疑に対してあざ笑うような笑い方をしているのが確認できる。麻生大臣が「内閣府に聞かれた方がいいんじゃないですか」と答えたのと呼応して、「まったく、お門違いな質問をする人ですねえ」という感じの笑い方だ。
この連載の
第1回の記事でも、萩生田文部科学大臣が田村智子議員から、常任幹事会の方を「お招き」していた件について問われたときに、
「常任幹事の中に(笑)、そういう各種団体の長の方がいらっしゃって、その方たちがお招きをされたと承知をしております。まあ私が主催者じゃないのに何かお招きしたというのはちょっと僣越な言い回しだなと思います」
と、「何を難癖をつけているんだ」と言わんばかりの笑いを交えたことを紹介したが、それと同種の笑い方だ。
そういう笑い方をして野党議員の追及を全く見当違いな追及であるかのように見せる、そして、麻生大臣が財務大臣であるにもかかわらず、予算の3倍の支出を問われてもまともに答弁しない、そういった様子をみていて、山本編集長は「非常におかしいな」「何かこれはあるな」と思ったのだろう。
実際の国会質疑のやり取りを見ているからこそ、感じられた違和感。それを大事にしたことが、このコメントからうかがわれる。
とはいえ、本格的な取材・調査に山本編集長らが乗り出したのは、昨年9月末以降のようだ。もう一つ、「おかしいな」と感じる出来事があったからだ。それは、「桜を見る会」の支出実態に合わせた2020年度の概算要求だ。
昨年11月8日の参議院予算委員会で田村智子議員が質疑のパネルで示したように、「桜を見る会」は、予算が毎年一定であるにもかかわらず、それを大幅に超えた支出額があり、それが年々増え続け、2019年には予算の3倍を超えていた。その支出額の増加を先に見たように5月21日の宮本徹議員は指摘したのだが、その指摘に対して開き直るかのように、概算要求では、2019年の支出額を上回り、従来の予算額の3倍を超える5728万8000円が要求されたのだ。
桜を見る会の支出(予算、実績)と参加者数(出典:日本共産党)
この概算要求の額を見て、山本編集長はさらに「
ますます、これはおかしい」と思ったという。山本編集長の語りはこうだ。
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上西:この5月の段階で、虎ノ門ニュースの方々とかっていうので、選考基準が不明だというところから、(今度は)後援会に注目をしたっていうのは、すごくいい着眼点だったと思うんですけれども、なぜ国会議員が招いているとか、後援会関係者の方のブログに注目されたんですか。
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山本:宮本議員の質問の時に、要するに参加者だとか予算の3倍に経費が増えてという問題が出たんですけどその答えが「結果的に増えた」というだけで、中身がわかんないんですよね。
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上西:「お答えを差し控える」と。
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山本:それで、財務大臣もそれについて苦笑いするんだけで何も言わないと。で、「これおかしいぞ」と思ってたら、9月末に、今年ですよね、2020年度の概算要求が出たんですけど、それが、(2019年は)予算の3倍使ったって言われたんで、概算要求で予算を3倍にあげたんですよね。
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上西:実態に合わせた。
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山本:実態に合わせた。で、「ますますこれはおかしいな」ということで、この問題をちょっと本格的に調べようと。
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