「知っていた」のに問題意識を持てなかった大手メディア
国会パブリックビューイングは1月6日に、「しんぶん赤旗」日曜版・山本豊彦編集長にお話を伺った。田村智子議員の「桜」質疑を振り返った
連載第1回を踏まえて、第2回の今回は、
なぜ山本編集長が「桜を見る会」について本格的に調べてみようと思ったのか、その動機と問題意識を、お話から振り返る。
興味深いのは、安倍首相が後援会関係者を大量に招待し記念撮影を行っていた実態を山本編集長は知らず、だからこそそれを知って驚いたこと、そして、これを安倍政権の本質のひとつである「私物化」の問題としてとらえたという点だ。
ここには、
実態を知っていた大手メディアが問題意識を持てなかったのに対し、実態を知らなかったからこそ山本編集長が問題意識を持ち、取材して世に問うべき問題があると考えた、というメディアの現状をめぐる論点も潜んでいる。
既存の大手メディアをめぐる問題は次回の第3回に取り上げることとして、ここでは、山本編集長が昨年10月13日のスクープに向けて、どのような問題意識を持ち、どのように証拠・証言をそろえていったのか、対談で伺ったお話を紹介していきたい。
2019年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版
●「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング
●文字起こし:「桜を見る会」質疑を支えたもの 山本豊彦(しんぶん赤旗日曜版編集長)・上西充子(国会パブリックビューイング代表) 国会パブリックビューイング 2020年1月6日
追及の発端は、2019年4月の東京新聞と5月の宮本徹議員質疑
田村智子議員が昨年11月8日に「桜を見る会」についての30分の質疑を行った背景には、大きく見て次のような経緯がある。
◆「桜を見る会」追及の経緯(2019年)
・4月16日:東京新聞「こちら特報部」が経費と参加者の増加を報じる
・5月9日:宮本徹議員が内閣府に資料要求
→ 直後に内閣府は招待者名簿をシュレッダーで廃棄
・5月13日および21日:宮本徹議員が国会で質疑
・9月末:「桜を見る会」の概算要求が従来の3倍超に
・10月13日:しんぶん赤旗日曜版1面が安倍首相の後援会関係者の招待を報じる
・11月8日:田村智子議員が参議院予算委員会で安倍首相に質疑
※その後、11月11日に、野党合同の「桜を見る会」追及チーム発足。11月25日に「追及本部」に格上げ。
昨年5月の
宮本徹議員(日本共産党)の質疑は、同年4月16日の東京新聞「こちら特報部」の記事を見て問題意識を持ち、行われたものだった。その質疑に向けて内閣府に名簿の資料要求を行ったところ、その直後に名簿が廃棄され、これが今に至る名簿問題につながることとなる。
宮本議員は昨年5月21日の衆議院財務金融委員会の質疑で、支出額と招待者数がどんどん増えており、
「虎ノ門ニュース」の出演者全員が招待されるなど、極めて不透明な基準で招待者が決められていることを問題とした。
それに対し、
井野靖久内閣府大臣官房長は、
今年の資料も既に廃棄していると答弁。各省庁への推薦者数の割り振りについても、具体的な説明を拒んでいた。
この質疑から昨年10月13日の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープ、そして昨年11月8日の参議院予算委員会における田村智子議員の質疑まで、どのような経緯があったのだろうか。
当初、筆者は5月以降、「しんぶん赤旗」と日本共産党が、綿密に連絡を取り合いながら調査・取材を進めてきたのだろうかと思っていたのだが、昨年12月24日に新宿西口地下広場で行った国会パブリックビューイングの街頭上映に田村議員をゲストとして迎えお話を伺ったところ、
「赤旗が取材を長く、春ぐらいに問題になりましたから、それ以降赤旗は、いろんな形での取材を、ずっと調査をやっていまして、それが10月13日の(「しんぶん赤旗」日曜版の)新聞報道になって、私は実はそれを見てからこの実態がわかったものですから、質問をやるにあたっては、記者さんに私の(事務所の)部屋にも来てもらって、いろんな情報を教えてもらって、この質疑に挑みました」
という発言があった(
下記の動画の49分21秒より)。
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字幕【田村智子議員ゲスト出演・緊急街頭上映】「#桜を見る会」ビフォー・アフター 国会パブリックビューイング 2019年12月24日(街頭上映用)
そこで、「しんぶん赤旗」日曜版の山本豊彦編集長に取材経緯を伺おうと思って1月6日の対談企画を立てたのだが、山本編集長も実は5月の宮本議員の質疑ののちにただちに本格的な取材を開始したわけではなかったようだ。本格的に取材をしなければ、と思ったのは、9月末に概算要求が行なわれ、その内容を知って「おかしい」と思ったことがきっかけだったという。
しかし、その「おかしい」は、5月の宮本議員の質疑を見ていて「おかしい」と思った問題意識を引き継いだものであった。詳しく見ていきたい。