秋田・イージス・アショアが核攻撃で狙われたら? 放射線と熱線が終わると、次は衝撃波とFirestormが街と人を襲う

広島原爆ドーム

モータリゼーションが格段に普及した現代、Firestormの被害は広島や長崎以上になることが予想される。(photo by Alice Cheung via Pixabay)

 前回までに、都市核攻撃の影響を示す文献や映像資料をご紹介し、それらをもとに50ktの強化原爆による都市攻撃が行われたときに何が起きるかについて起爆後の三秒間についてご紹介しました。  この三秒間だけで数万人の市民が亡くなる甚大な被害なのですが、都市核攻撃の効果は、ここまでは前座に過ぎません。  今回は、衝撃波とFirestorm(空襲火災)についてご紹介します。

衝撃波の影響 ~20秒

 核爆発の閃光は、直後に火球として視認されはじめ、この火球は広がって行きます。火球の膨張に伴い衝撃波が爆心から広がって行きます。この衝撃波は、秒速600m程度の超音速で同心円状に広がります。  爆心から500m圏内ですと、数十トン/平方メートルの圧力(風速200m/s以上)によってすべての人工構築物は圧壊します。例えば新屋イージス・アショア基地は、跡形もなく粉砕されます。  1000m圏内でも十数トン/平方メートル近い圧力(風速100m/s以上)で、木造建物や鉄骨建物は圧壊します。鉄筋コンクリートの場合も柱など構造を支えるもの以外は破壊されます。1000m圏内に居る人は、放射線、熱線、衝撃波によって半年内の生存可能性は殆どありません。  1500m圏内では、4〜5トン/平方メートルの圧力(風速100m/s前後)となり、鉄筋以外の建物は崩壊します。また、屋外に居る人は、致傷圧力を超える風圧で吹き飛ばされ、眼球、鼓膜などの器官の損傷と全身打撲によって致命的打撃を受けます。鉄筋コンクリート以外の建物内に居る人は、建物に押しつぶされ、脱出はできません。鉄筋コンクリートの建物は、大破から小破が混在しますが、ガラスなどの非構造材は大破し、内部への衝撃波とガラス片の侵入による甚大な打撃によって内部の人は死亡または致命傷となります。  走行中の自動車はほぼすべてが操縦不能となり大破します、乗員は死亡または致命傷となります。  1500m圏内でも屋内外を問わず、生存は絶望的となります。  2000m圏内では、3トン/平方メートルの圧力(風速60〜80m/s)となり、木造家屋は倒壊します。屋外に居る人は鼓膜が破れるなどし、吹き飛ばされます。  鉄筋コンクリートの建物は構造材こそ無事ですが、窓ガラスはすべて破壊され、屋内に流れ込みます。屋内の人は、屋内で渦巻く爆風に翻弄されながらガラスに引き裂かれ、壁や床にたたきつけられます。  走行中の乗用車は、吹き飛ばされて大破、走行不能となりますが、大型自動車は走行可能です。但し、乗員は死亡ないし大けがとなりますので殆どの自動車は道路上で動かなくなります。  3000m圏内では1〜2トン/平方メートルの圧力(風速30〜40m/s)となり、やはり木造家屋は多く倒壊します。この距離でも屋外に居る人は吹き飛ばされる場合が多くあります。  鉄筋コンクリートの建物は、外観こそ無事ですが、窓ガラスはすべて破壊され衝撃波と共に内部に侵入し、中の人を死傷させます。  3000m圏内までは、生物も人為的建築物も殆どが機能を失う大被害となり都市機能は完全に失われます秋田市は、爆心から2000m〜3000m圏内に秋田県庁、秋田市役所、秋田県警察本部、秋田市消防本部、秋田市立病院が集中していますが、これらはすべて核爆発から数秒で全機能を喪失します。生存者も少ないことから、組織的防災、行政機能は完全に消滅します。

5000m圏から生存可能性が急増する

 5000m圏内までは、負傷者が出始める1psi(約0.7トン/平方メートル)の衝撃波圧力であり、ガラスはすべて粉々に割れ、破片が壁に突き刺さる威力があります。屋外に居る人はDuck and Cover(伏せて頭を覆え)をしなければ大けがをしますし、屋内の人も窓際から離れ、机の下などに伏せなければガラスにより大きなけがをします。Duck and Coverは、5000m圏程度からは有効といえます。  走行中の自動車は、乗用車は多くが走行不能となりますが、バスなど大型自動車は、乗員が無事ならばそのまま継続して走行可能です。  木造家屋には大きな損傷をうけますが、鉄骨、鉄筋の建物は、窓などの非構造材が大破するものの構造材は無傷となります。  屋根ソーラー、キロ・メガソーラーを問わず太陽電池パネルは吹き飛ばされます。また、殆どの貯水タンクは、大破した状態となり受水槽や高架水槽を用いる建物では給水不能となります。  5000m圏内でも都市機能は大きく損なわれる大被害となります。  爆心からの距離の三乗に反比例して衝撃波は威力を失っていきますが、爆心から8000mまでは家屋の窓ガラスが割れる被害が生じます。  一方で熱線による発火や、致命的な熱傷は生じなくなるため、5000m圏外ではけが人の救命、搬送など直ちに開始されます。
衝撃波による影響

衝撃波による影響
3000m圏まで、瓦礫の山となる。
5000m圏まで、爆風で人がけがをし、乗用車は行動不能となる。
5000m圏外でもガラスやトタンが破壊される。
2000m圏外から乗員が無事なら大型自動車は、走行可能。
起爆後経過時間:t=〜20秒
国土地理院 地形図

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放射線、熱線、衝撃波に次ぐ恐怖が襲う
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*イージス・アショア関連の過去20回分の記事については以下参照。

"イージス・アショアは「無敵の超兵器」か「大いなる無駄」か?"

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