菅原経産相辞任で「統一教会がらみ」閣僚は10人に。安倍内閣と統一教会の関係を読み解く

副大臣・政務官にも計7人

 副大臣と政務官にも7人もの「統一教会がらみ」がいる。義家弘介・法務副大臣、上野通子・文科副大臣、伊藤良孝・農水副大臣、御法川信英・国交・内閣府・復興副大臣、石原宏高・環境・内閣府副大臣、山本朋広・防衛・内閣府副大臣だ。  まず義家氏は、前出の世界戦略総合研究所の定例会で2010年6月に講演している。ただし義家氏は統一教会より幸福の科学との付き合いを示す情報が多い。2008年に幸福の科学の月刊誌『ザ・リバティ』のインタビュー記事に、2010年にはやはり幸福の科学の月刊誌『Are You Happy?』の座談会記事に登場。2016年の幸福実現党の政治資金収支報告書には、義家氏の後援会に対し「研修費」として2万円を2回、計4回支払った記録がある。同党は2015年以前や2015、2017年にも義家後援会に「会費」「研修費」として2万円を支払うなどしている。  上野氏は、2012年、自身が代表を務める自民党栃木県参議院選挙区第一支部が世界平和女性連合に会費1万5000円を支払っている。同年7月には前出の世界平和女性連合のシンポジウムで講演。翌2013にも、自民党同支部が世界戦略総合研究所に会費1万2000円を支払った。2014年9月には、統一教会系の世界戦略総合研究所に参議院議員会館使用の便宜をはかり、2016年に自民党東京都第十一選挙区支部が世界日報社から6万円の寄附受け取った。  伊藤氏は2015年7月、統一教会系イベント「PEACE ROAD 2015 in Japan」のレセプションに釧路実行委員長として出席した。  御法川氏は2016年11月、統一教会による世界平和国会議員連合日本創設式典に出席。翌2017年7月には、統一教会の誘いでアメリカ外遊、ワシントンDCの米下院議院会館で「韓日米の国会議員カンファレンス」やNYの国連本部で「韓日米有識者懇談会」、韓鶴子(現・統一教会総裁)主賓の超宗教フェスティバル『真の父母様マジソンスクエアガーデン大会』にも参加した。  石原氏は、2006年に天宙平和連合(UPF)の「祖国郷土還元日本大会」に祝電を打っている。  山本氏と統一教会との関わりは枚挙にいとまがない。2017年2月に韓国で開かれた統一教会による世界平和国会議員連合の総会で同教団の韓鶴子総裁から統一教会を国の宗教にするという“国家復帰”指令を受任。同年5月には、教団の1万人集会で来賓として挨拶し、韓鶴子を「マザームーン」と呼び自民党への支援に対する感謝を述べた。同年七月には統一教会の誘いでアメリカ外遊。前述の御法川氏同様に、ワシントンDCの米下院議院会館で「韓日米の国会議員カンファレンス」に参加した。翌2018年には、キャピトルホテル東急で開かれた国際勝共連合50周年大会に出席。同12月には神奈川労働プラザ多目的ホールで統一教会系団体の平和大使協議会と東神奈川平和大使協議会が共催しUPF(天宙平和連合)が後援した「アフリカビジョンセミナー」で来賓挨拶をしている。  山本氏については2017年10月の衆院選中、鈴木エイト氏が統一教会との関係について尋ねる取材を行ったところ、「選挙自由妨害」として大船警察署に通報。鈴木氏を警察に逮捕させようとしたこともある。鈴木氏や私について虚偽の110番通報や虚偽告訴を行っている菅原一秀事務所とよく似た体質が垣間見られる。  宮島喜文財務政務官も、2016年7月の参院選で統一教会の組織票の上乗せで当選した疑いが濃厚な人物。翌2017年5月には、教団の1万人集会で来賓として挨拶に立ち、参院選での支援の礼を述べた。  菅原一秀氏に代わって新たに経産相に就任した梶山弘志氏については、現在のところ統一教会との関係を示す情報は得られていない。そのため安倍内閣において内閣改造当初は11人だった「統一教会がらみ」閣僚は10人に減ったものの、依然として閣僚の半数を占めている。また官房副長官、副大臣、政務官などを含めると、その数は18人にものぼる。

統一教会への優遇ではない?

 安倍首相と統一教会との関わりは以前から指摘されてきたことだが、さすがに現在の安倍内閣におけるこの数は異常としか言いようがない。しかし、これを単純に統一教会に対する優遇と捉えるのは早計かもしれない。  複数のメディアが、前回の内閣改造に続いて今回についても「在庫一掃内閣」という表現を用いている。13人が初入閣で、閣僚未経験の中堅が多く登用されたからだ。  しかし一覧表を見れば分かる通り、宗教団体との関わりが「統一教会のみ」という閣僚はゼロだ。統一教会と関わりを持つ全ての閣僚が、ほかの宗教団体とも関わりを持っている。とくだん統一教会に配慮した人選とは考えにくい。  前出の統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、「菅政権」への布石で鈴木エイト氏は、今回の内閣改造について、菅官房長官の影響力を指摘している。 〈これらの“菅グループ”には今回防衛副大臣に再登用された山本朋広・自民党前国防部会長や星野剛、当選1回議員の“菅信奉会”の事務局を務める島村大など統一教会と関係の深い議員も多い。〉  無派閥だったり、選挙に弱かったり、当選回数が少なく支持基盤に不安があったりする若手や中堅議員であれば、様々な団体の会合に出席して顔を売ることになるだろうし、その中に統一教会が含まれるケースも出てくる。菅人脈が、統一教会にからめとられやすい人材を多く抱えている上に、そもそも安倍首相からして統一教会と馴れ合うことをなんとも思っていない。  統一教会の方も、2016年に世界平和国会議員連合(IAPP)を設立。日本での設立大会には当時の閣僚5人を含み自民党を中心とした国会議員63人、秘書による代理出席を含めると100人以上が出席したという*。 <*統一教会創設の議員連合創設大会に国会議員63人が参加<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第6回>(鈴木エイト)>  内閣改造に際して統一教会をことさらに優遇したのではない。かねてからの安倍政権や自民党の体質と統一教会の「地道な」政治活動による当然の結果として、中堅議員の初入閣が多ければ統一教会と「も」関わりを持つ閣僚の割合が増えた。そんな構図に見える。  もちろん統一教会が安倍政権の政策や個々の政治家の意見に影響を与える側面はないとは言えないだろう。そして何よりも、国会議員、ましてや閣僚が統一教会のイベントやメディアに登場することで権威付けとなり、統一教会の信者への引き締めや勧誘活動に加担することになる。10月30日に全国霊感商法対策弁護士連絡会が全国会議員に対して統一教会関連のイベントに参加しないよう求める要望書を送付し、それに先立つ10月27日に記者会見も開いている。会見では、統一教会と関わりを持つ政治家が今回の内閣改造で多く入閣したことにも触れられていた*。 <*国会議員の“統一教会”イベントへの出席に、弁護士団体が再び要望書。取りやめた議員はいたか?<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第19回>>  安倍政権による露骨な統一教会優遇が行われようが行われまいが、これだけで「カルト問題」としては十分すぎる問題だ。
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右も左も間違えがちな「問題の本質」
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