関電資金還流問題で飛び交う「元助役が交通遮断した」論を航空写真と地形図で検証する

地形図で見る高浜発電所への動線

現在の高浜発電所への動線

現在の高浜発電所への動線
国土地理院1/25,000地形図(筆者による加工あり)

 まずは、現在の1/25,000地形図を閲覧します。現在の地図を見る限り、高浜発電所のある田ノ浦までは、現在使われている高浜町からの福井県道149号線舞鶴市から高浜町を迂回する場合は京都府道772号線・福井県道21号線の二つの動線が確保できます。  また、音海地区にある内浦港も海上輸送の拠点と出来、有力な動線となり得ます。  従って高浜発電所は、現在三つの独立した動線を確保できる可能性があります。これは、動線が非常に乏しい日本の多くの原子力発電所の中では珍しい優位点です。現在高浜発電所では、特重関連工事として動線の複数化が求められています。  筆者は、おそらく神野側の県道21号線と第二動線を接続するのではないかと推測しています。仮に推測が正しければ、高浜発電所は、独立した2つの陸上動線と1つの動線を持ちうる国内では比較的珍しい発電所となります。  海上輸送は、重機材や資材の輸送に使われますが、毎日1000人単位の労働者を現場に運ぶには、陸上輸送が確保されていることが望ましいです。現状では県道149号線の難波江(なばえ)・田ノ浦間こそ重複しますが、二系統の陸上輸送経路が確保されています。また福井県道21号線からは神野浦(こうのうら)から田ノ浦までの直通道路を短期間で仮設することは可能ですので建設にあたって陸上輸送経路の確保は容易と言えます。  しかし地図はあくまで2019年現在の物です。約50年昔と大きく変わっている可能性があります。そこで今回も国土地理院空中写真閲覧サービスを用いて当時の音海半島周辺を広域にわたって調べましょう。  なお、写真枚数が多くなりすぎる為、写真は音海半島と音海半島基部のみのご紹介とします。舞鶴市から塩汲峠を経た動線に関心を持たれた場合は、国土地理院地図・空中写真閲覧サービスで閲覧してください。

国土地理院空中写真で見る音海半島周辺地域の歴史

 まず1948年10月の航空写真を見ますと、音海半島にはまともな道路がありませんし、内浦港にも近代的港湾施設はありません。京都府と福井県境で道路が途切れていますので全くお話になりません。敗戦前の日本がモータリゼーションという一大社会変革を経ていなかったことがよく分かります。これでは渡船による海上交通しか頼れません。こんな貧弱な社会でよくも合衆国に戦争を仕掛けたものだと呆れかえるほかありません。
内浦湾全体1948年10月13日米軍撮影

内浦湾全体1948/10/13米軍撮影
国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスより

 この時点では、田ノ浦は事実上全方位に向けて孤立しており、山道を介してか、小舟で耕作の為に通うことになります。この時代にはそう珍しいものではなく、国内の海岸部にはあちこちに船通いの孤立した農耕地がありました。  田ノ浦までの動線は、舞鶴市からは県府境界の塩汲峠(しおくみとうげ)で車両通行可能な道路が断絶しており(実際には塩を運んだ古道がある)、県内も神野浦まで車両交通がなんとか出来るという程度です。高浜町からは、難波江までは車両が辛うじて入れますが、難波江より北の小黒飯、田ノ浦までは徒歩となります。音海には近代的港湾施設がなく、道路も小黒飯まで精々徒歩です。  
1948年の田浦(高浜発電所)への動線

1948年の田浦(高浜発電所)への動線
国土地理院1/25,000地形図(筆者による加工あり)

 次に1962年の昭和天皇若狭行幸翌年、1963年になると、陸上自衛隊による道路設営などもあって、舞鶴、高浜、音海の三方向の動線が、道路通行可能となります。まだ、なんとか通れる程度という箇所も残っていますが、予算を投入すれば数年程度で大型車両通行可能となりますので、原子力発電所建設への悪影響はありません。  なにしろ隣の大島では、約4年遅れで計画の始まった大飯発電所用地までは、道路が全くなく、11キロの取り付け道路(後の福井県道241号線)を関西電力自ら建設しています。  この時点で音海には、近代的港湾施設はありません。従って、陸路のみの二方向の独立した動線が確保されつつあります。
音海半島1963年04月27日国土地理院撮影

音海半島1963/04/27国土地理院撮影
国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスより

音海半島基部1963年05月03日国土地理院撮影

音海半島基部1963/05/03国土地理院撮影
国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスより

1963年の田ノ浦(高浜発電所)への動線

1963年の田ノ浦(高浜発電所)への動線
国土地理院1/25,000地形図(筆者による加工あり)

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原発誘致から3年後。急速に進む道路整備
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