劣悪な労働環境で、続々と逃げ出す「外国人技能実習生」。4月から新たに介護・宿泊業も

社長の息子による暴行、実習先から逃げて入管に収容

鹿島灘にある実習先農家の畑

ゾー・ゾーさんの働いていた、鹿島灘にある実習先農家の畑

 ミャンマーのシャン州出身の男性、ゾー・ゾーさん(35歳)は2015年12月に来日し茨城県鹿嶋市の農家で技能実習生として1年10か月働いていたが、職場を逃げ出し入管に収容された。彼に逃げた理由を聞くと、使用者や先輩従業員から激しい暴力を受けていたことがわかった。  農家の社長は高齢で、現場は社長の息子(当時36歳)が取りしきっていた。他にはミャンマー人実習生の先輩(当時27歳)と同期の実習生が1人いた。  最初に暴力を受けたのは2016年4月ごろ。メロン収穫の時期だった。「仕事を覚えるのが遅い」という理由で、寮の部屋で社長の息子に胸ぐらを掴まれて突き飛ばされた。部屋の荷物を全部外に出され、「これから強制送還するから管理組合に行く」と脅された。  彼は謝り続けて帰国を免れたが、それから数か月経った8月のある日、仕事前に社長の息子に鉄パイプで頭を殴られた。さらに2017年5月ごろには先輩のミャンマー人から首を絞められる、ハサミを突きつけられるといった暴行を受けた。  さらに暴力はエスカレートし、2017年11月に寮でミャンマー人の先輩に包丁を突きつけられ、彼は裸足で寮を飛び出て駅に向かった。東京に逃れて友人の家にしばらくいたが、実習先から逃げたことで入管に収容されてしまった。

実習先を逃げ出してしまったため、実家の畑をブローカーに没収される

ヤンゴンにて

ゾー・ゾーさんの出身は、仏教国であるミャンマー。その首都ヤンゴン

 実習先の賃金は月14万円だったが、3万5000円が控除されて、4万5000円は渡航費用の借金返済に、残った数万円を生活費と国への仕送りに充てていた。  ゾー・ゾーさんが渡航の際にブローカーに払った費用は80万円。貯蓄を切り崩して、足りない分は銀行や親戚から借金して払った。渡航費の返済は終わっている。しかしブローカーとの契約で、「3年の実習期間を満了せずに途中で逃げた場合は違約金90万円を支払うか、担保の畑を没収される」という契約を結んでいた。  ゾー・ゾーさんは実家の両親の畑をブローカーに奪われてしまったのだ。今の状態ではミャンマーに帰ることができず、帰国を拒んで東京入管に1年以上収容されている。
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「会社に責任はない」と嘯く受け入れ機関
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