しかし、このニュースが出回って思わぬ方向に話が展開した。
今までの世の中なら「瀧の野郎、若い頃から薬やりまくってたのか!とんでもねえ悪人だ!」となる所が、「え!そんなに若い頃から長いことやってたのに、ちゃんと社会生活を送ってて、しかも、アカデミー賞とかNHKのドラマに出演するような立派な俳優をやれてたの? 実は違法薬物も用法、容量を守っていれば別に問題ないんじゃね? それに瀧さん、直接人に危害加えてるわけじゃないし、迷惑かけてたわけじゃないし別に悪くなくね?」という論調が現れたのだ。
まさに似たような疑問を僕も抱いていたことがあって、何年か前に俳優の高知東生さんが覚せい剤で逮捕された時にやはり、20年近くやっていたという話を聞いて、その時に「え?20年シャブやってて、普通に生活して俳優として仕事してたってマジ?別に大丈夫な人は大丈夫なんじゃね?」と思ったことがあったのだ。
で、このタイミングだから、ぶっちゃけていってしまうが、拙書「前科おじさん」の中ですら書かず、警察の取り調べでも言わなかったことだ。
正直、僕も20代から大麻を使用していた。
辞めていた時期もあったんだけど。
で、その後にやっぱり違法なことはよくないよな、捕まらない方がいいよな、と思って当時、市場に流行りはじめた合法ハーブと言われていた脱法ドラッグにハマっていた時期があった。
脱法ハーブも出始めの頃は、本物の大麻と同じような感覚の効き目で、これで捕まらないなら安心だなー、なんて思っていたのだけど、規制がどんどん入って、その規制を逃れるために成分が変わっていって、訳の分からないモノが混入していたりとかで、「捕まらないのはいいけど、なんかこれ、体に悪くねえ?やばくね?」という感じになっていった。
割と死ぬかも?と思う体験もして、こりゃマジでやめとこう、と、脱法ドラッグもやめた。
これは30歳半ばの話。
その後に脱法ドラッグは規制とのイタチごっこに突入して、第五世代とかになって人が死んだり、マジで頭おかしくなっちゃう奴があらわれて、殺人事件や交通事故が起き、「危険ドラッグ」という呼称に変わって厳しく取り締まられ、今ではこっちの方が入手が難しいらしい。その頃の脱法ドラッグの成分はほとんど覚せい剤だったらしい。
そして、その頃、吸うものがなかった僕はなんとタバコを吸い始めた。
30にしてたばこデビュー。
実は20代は僕は酒もタバコもやらなかった。たまに大麻をやる程度だった。タバコは結局今もやめられていない。
そして、脱法ドラッグをやめた僕は体の事を考えた末に、また違法であるところの大麻を使うようになったのだった。
酒が飲めなかった僕にとっては非常に重要なストレス解消の手段でもあり、音楽に対する感覚があがることも良かった。
やはり脱法ドラッグよりも大麻を吸ってる時期のが体調も悪くならないし、調子が良かった気がする。
大麻を使っていること自体で、特に誰にも迷惑をかけて無かったし、仕事もきっちりやっていたはずだ。いろいろ順調だった。
でもあの日を境に変わってしまった。