違法薬物事案で逮捕、作品出荷停止を経験した電グルファンのミュージシャン、ピエール瀧逮捕への思いを語る

SNSで好きなように書かれるショック

 自分の時は怖くてSNSなんか見られなかったけど、実際これを体験したら気でも狂っていたかも知れない。 今の所、瀧さん本人は弁護士との接見や、面会者からの伝聞でしか、外界の情報が入らないはずなので、目に入る事はないだろう。もちろんぼくが今書いているこの記事も。  これは経験から言うけども、ある程度知名度のある人が不祥事をやらかした直後は絶対エゴサーチとかしちゃダメ、絶対!  特に初犯の場合は「そんな事する人だと思わなかった」系の勝手な人物像を作られて勝手に落胆され悪意をぶつけられるパターンも多発するので精神健康を保つためにはSNSは見ない事。  そうしたら案の定、瀧さんの逮捕の話がTwitter上で拡散していく中で、僕の名前も引き合いに出されてはじめた。  僕もテクノ的な音楽をやっていて、クラブDJで、同じラジオ局で番組に出ていたということで、規模と知名度は天と地との差ながらも、割と似たような方向にいたわけで、当然、引き合いに出されてもおかしくない。  同業のDJ達やアーティスト達もTwitterでそれぞれの意見を発する中で、僕も何か書くべきなのだろうか、と考えあぐねた挙句、逮捕後に自分が作った「前科おじさん」(”変なおじさん”の抑揚で発音)という逮捕後にヤケクソになって作った楽曲のPVのURLを貼り、「シャバからは以上です」とだけ呟いた。  そしてそれは、それなりな拡散をした。

逮捕後、当たり前にあったものが一気になくなった

 下手な事を言いたく無かったし、あんまり蒸し返されるのもなぁ、という気持ちもあった。  逮捕後、店長をしてたクラブも閉鎖、仕事が減り、メジャーで出していたアルバムも速攻で出荷、配信停止。収入なし。  当たり前にあったものが一気になくなった。  いまや部屋の更新費用に窮している状況の我が身からすると、もしかしたらこれで多少は仕事のオファーがあるんじゃないかな?なんて、邪な気持ちもないわけでは無かった。  でも実際にそれで生きている身には切実だ。  人に知って、気にしてもらえないと、我々みたいな人間には仕事がないからだ。とはいえ、今の日本では「僕は大麻の経験がある前科持ちのミュージシャン/DJです!仕事ください!」で仕事が来る場合なんてない。  過去に俺の人柄を知っている人からくる仕事や、純粋に音楽に関する技術的な部分で評価してくれる人からのオファーで細々とやっているし、それだけじゃ食えないからステッカー屋をやったりして、なんとかして生きている。  で、この原稿依頼は数少ない「前科者だから来る」仕事の一つというわけだ。
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違法薬物で逮捕は「割に合わない」
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