裁判権だけじゃない。あまりに不平等な日米地位協定の実態<伊勢崎賢治氏>

伊勢崎氏が問題とする環境権とは

沖縄本島北部のジャングルで訓練を行う米兵

――環境権とは、例えばどういったことですか? 伊勢崎:米軍基地が環境汚染の原因となっている場合、米軍の許可がなければ基地内に立ち入ることができません。仮に入れたとしても、それを調査する権限はない。また、返還した基地の跡地が汚染されていた場合の「原状回復義務」もありません。 ――空域の管理という面では、沖縄では米軍機の訓練が問題になっていますね。 伊勢崎:日本と同じ敗戦国のイタリアやドイツは、もともと不平等な地位協定を受け入れていました。しかし、米軍による事故や事件を受けて、補足協定という形で改定を重ねてきたんです。現在では訓練できる空域や時間帯の制限、騒音対策など、細かく規定されています。しかし日本は、基地や空域の管理権を持っていないので、米軍はやりたい放題です。
敗戦国3国の地位協定比較

敗戦国3国の地位協定比較

――だから日本は米軍に「申し入れ」をすることしかできないんですね。しかしNATOの場合、多国間の軍事同盟だから互恵性が必要となったのではないですか。

’03年、日本政府の特別代表として、アフガニスタンの武装解除を行った伊勢崎氏(右端)

伊勢崎:米国は2国間でも互恵的な地位協定を結んでいます。フィリピンがいい例で、完全な互恵性です。日本のような「平時」ではない、「準戦時」のはずの韓国も改定を重ね、日本よりも有利な地位協定になっています。米国が介入して傀儡政権をつくったアフガニスタンとの地位協定すら、日本よりもずっと平等ですよ。だから北方領土交渉でも、日本が主権国家として「判断」できないことがわかっているから、ロシア側は真摯に交渉に向き合ってくれないんです。なぜなら、米国は日本のどこにでも基地の提供を求める「権利」があると地位協定で規定されているからです。

プーチン大統領と北方領土返還について話し合う安倍首相

――日本は、米国以外とも地位協定を結んでいるのですか? 伊勢崎:現在日本が地位協定を結んでいる相手は、米国、朝鮮国連軍、ジブチ(逆の立場の、自衛隊を駐留させる派兵国として)です。 ――朝鮮国連軍というのは? 伊勢崎:朝鮮戦争で北朝鮮・中国と戦った多国籍軍が、「休戦」状態の今も国連軍として駐留しています。横田基地にその後方司令部があるんです。
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朝鮮国連軍の実態
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