9)および10) 防衛省のいう「決定的証拠」*について
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レーダー照射の決定的証拠「韓国側に示す用意」読売新聞 2019/01/08 18:49
ここでいよいよ、1/21に防衛省が公開した「決定的証拠」について検討します。
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韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について 平成31年1月21日防衛省
この冒頭にレーダー探知音なる18秒の音と21秒の音があります。
理工学の高等教育を取得された方なら、これらは何の意味もない
証拠能力皆無のゴミ「データ」だと瞬時に看破できると思います。この「決定的証拠」は決定的お笑いぐさでしかありません。了。
――で終わりにしたところですが、この無意味な合成音を決定的証拠と信じる日本人があまりに多く、心底驚いています。平素、一般人の啓蒙と称して地回りヤクザのごとく因縁をつけて回るホビー軍事アナリストも、多くがこの「謎音」を「決定的証拠」と信じ込んでいる例が見られます。世も末です。
防衛省が「決定的証拠」とする、「火器管制レーダー探知音」なるものは、18秒間のノイズです。なぜか複数の人の音声と思われるものも含まれています。音はそれとして、その音は、
「何を」「どのように」「どういった理屈で」「いつ」「だれが」「どこで」処理して生成したのかわからねば検証可能性は全くありません。現状では、秋の夜の虫の鳴き声をそれらしく18秒に編集したと言われても仕方ありません。もうすこし詳しく説明しましょう。
「何を」:不明です。防衛省が、広開土大王の広開土大王の射撃管制レーダー探知音だと主張していることだけが根拠です。全くお話になりません
「どのように」:
不明です
「どういった理屈で」:
不明です
「いつ」:
不明です
「だれが」:
不明です
「どこで」:
不明です
さらに、捜索用レーダー探知音なる21秒のノイズですが、これに至ってはそもそも模擬音なのか、測定したものの変換なのかすらわかりません。
これが大学での学生実験レポートならば、不正行為(カンニング:データ捏造)として厳重な処分(氏名、学籍番号の全学への発表と同一セメスターの全単位没収)となる恐れすらあります。私はそこまで厳しくすることもないと思いますが、実際に類似例でカンニングとなり、留年した学生がいます。データの取り扱いはとても重要で厳格なものです。甘く見る事なかれ。
さらに言えば信号増幅には、
飽和や窒息の問題があります。微弱信号を探知、増幅、変換する回路ではある一定以上の信号が入力すると飽和して不連続信号が連続信号として出力されることが頻繁にあります。これを「飽和」と呼び、「サチる(saturation)」というスラングもあります。また、あまりにも強い信号が入った場合、主にセンサー側(場合によっては増幅器)が「窒息」し、出力信号がゼロとなることがあります。
電子支援装置(ESM)による電探波探知の場合、遠距離の微弱信号から近距離の強い信号までを処理します。もちろんレンジセレクタ(基本的には自動変換)により、増幅率は切り替えられるでしょうが、それはどのような理屈でどのような段階でしょうか。全く情報がありません。特に今回のような近距離(至近距離といっても良い)の場合、そもそも受信電界強度が飽和していたのではないかという疑問もあります。
そもそも、この公開された「音」は、数分間のものを18秒間に切り取った体裁です。これでは
この音の正体が何であるかますます疑念が深まります。
そのうえ、
「保全措置」なる正体不明の加工までしていると注記しています。これでは
証拠能力など全くありません。ゴミです。正体不明の処理を何かに施した「結果」の「謎の音」に過ぎません。極論をすれば、どこかの庭で録音した虫の鳴き声かもしれません。
このゴミを「決定的証拠」と信じるのは、まさに「鰯の頭も信心から」というものです。その根拠は
「防衛省発表」だからのみです。あの、日報隠蔽をはじめとする捏造、偽造、隠蔽の「不正の総合百貨店」を無批判に信仰するとは、あまりにも無防備です。
この18秒の音ですが、背後に音声が入っていますので、TVの音を背景とした庭のキリギリスかなにかの虫の声と見なすことすら可能です。しかし、
さすがに海上自衛隊がそのような事をするとは考えられません。これが海自に対する信頼です。
この音を聞いたときに背後の音声が鍵と私は考えました。これはおそらく、P-1の戦術士やクリューが聞いているインターコムの録音でしょう。要するにこの18秒の音は、
P-1の戦術士をはじめとするクリューが「射撃電探によって照射された」と判断した判断材料=「根拠」に過ぎません。残念ながらそれは証拠ではありません。
「電探照射音」なるものが単独で録音されていないことからも重要度の低い情報であると考えられます。
決定的な証拠(smoking gun )として求められるのは、P-1によって探知された電波の周波数、強度、波形、継続時間でしょう。生データの開示は、P-1のESM能力を露呈することになりますが、日韓軍事インシデントを一方的に外交問題化した以上、探知された電波の周波数、強度、波形、継続時間、それらの探知座標程度は提示する責任があると防衛省にはいえます。
最終報告書でやっと防衛省が明らかにした、該当電探の形式がSTIRですので、それだけで対空射撃電探による測定がなされたか否かは判明します。
それすらせずに、正体不明の音を「決定的証拠」として出した時点で、
P-1はSTIR-180の電波情報を現場で採取できていなかったと考えるのが妥当でしょう。
このようなゴミを実務者協議の場に持ちだし、韓国側に対して「我が軍艦(広開土大王)のレーダー情報全体に対する(開示)要求」(参照:
韓国国防部2019/01/15ブリーフィング)をするなど、極めて不誠実な植民地主義者と見なされても仕方ないでしょう。このような不当な要求は拒絶されて当然であって、拒絶された事実のみを国内向けに不当であると喧伝するための姑息な行動でしょう。