7) 韓国側は火器管制レーダー照射を認めない
これは
不正確な主張で、韓国側は、一貫して
「STIR-180での電波発振」を認めていません。韓国側の報道では、STIR-180による電波発振は、指揮部(司令部)の許可がないとできないとされています(※参照:
“日本「味方に銃撃つか」vs韓国「射撃用レーダー撃たなかった」 | Joongang Ilbo | 中央日報 2018年12月24日07時43分” )。韓国側は、その他の電探については使用を認めています(正確に言えば”使用を否定してない”)。
この火器管制レーダーが具体的に何であるかについて、防衛省は徹底して明らかにせず、質問にも一切答えず(参照:
“防衛省・自衛隊:防衛大臣記者会見|平成30年12月25日(11:42~12:00)” )、最終報告でSTIRであると明らかにしたものの、そこで協議を一方的に打ち切ってしまいました。これもとくに我々市民に対して大変に不誠実なことです。
8) 韓国側は防衛省に「事実の歪曲」の中止と「低空で脅威飛行したこと」への謝罪を求めた
「事実の歪曲」については、真相究明できない限り、韓国側の抗議を否定できません。
実務者協議の一方的な打ち切りは韓国側の抗議を正当化し得ます。なお、政府寄生者や与党政治業者、日本側マスメディアによるデマゴギーは、まさに
「事実の歪曲」であって、韓国側の主張は正当です。もちろん、それら(政府寄生者、与党制事業者、メスメディアによるデマゴギー)への謝罪を日本政府に求め得るか否かは意見が別れますし、私は否定的考えです。小細工して小火が火事になったとの感が強いです。
「低空で脅威飛行したこと」への韓国側の抗議は、韓国国防部2018/12/24ブリーフィングでは見られません。12/28の日本側による編集映像の公開=外交問題化後の、韓国国防部報道官発表「むしろ人道主義的な救助活動に集中していたわが艦艇に日本の哨戒機が低空の威嚇飛行をしたことは、友好国として極めて失望的なこと」(参照:
“レーダー照射問題 日本の映像公開に「深い憂慮と遺憾」=韓国国防部” 聯合ニュース 2018.12.28 17:56”)に見られるように、これも日本側の藪蛇です。いままで、海自の哨戒機がとても友好的とは言えない低空接触飛行によるヴィジュアルコンタクトをしてきたことについて、中露韓などの周辺国は、黙ってきたわけですが、日本政府による今回の外交問題化によって外交の表舞台に引き出されてしまったのです。外交はまさに相互主義ですから日本が札を切れば、相手国もそれまで使わなかった札を切ります。当たり前のことです。
本連載で指摘してきたとおり、海自の哨戒機による
公海上でのヴィジュアルコンタクト(高度500ft,距離500mでの低空接触飛行)は、海自のお家芸と言えるもので、他国はやっていないそうですが、日本の領域防衛、シーレーン防衛のために何十年も行われてきたことです。中露韓などの周辺国艦船は、日常的に公海上でそのような接触を受けていたのですが、防衛省の主張通り抗議は受けていません。しかし、
外交問題化すれば、CUES 2.8 e)項目に該当するとして正式な抗議を受ける可能性があります。
e) 遭遇した艦艇近傍(付近)での機動飛行(aerobatics:特殊飛行、曲芸飛行)および模擬攻撃。
P-1のような大型ジェット4発機が高度500ft距離500mでしつこく日常的に低空接触するというのは脅威と受け取られる(解釈される)可能性があり、これはやや小ぶりで4発プロペラ機のP-3Cでも同様でしょう。
以前指摘したように、実務者協議の段階なら、「海自さん、相変わらずお見事ですね、手加減してくださいよ。」で済む話が、外交の場に持ち出せば、「日本特有の、公海上での商船、公船に対する威嚇飛行」と見做され、その後の海自の哨戒活動に悪影響を及ぼす可能性はあります。
なお韓国海軍のP-3Cによる接触飛行は、「不審船舶の監視など特殊作戦以外には高度約300m、距離約5500~9000mを飛行し、探知装備の性能などを考慮するとこの程度の距離でも十分に相手の艦艇を識別できる。」(参照:
韓国国防部プレスリリース2019年1月22日)としています。
もちろん、韓国と日本にとっての哨戒活動の重要性は大きく異なります。従って、
韓国の主張に合わせて日本の哨戒活動を改める必要はないと思います。しかし、
韓国(諸外国)から見れば、日本の哨戒機によるヴィジュアルコンタクトは、自国公船を「不審船」扱いしていると解釈される危険を示しており、やはり
意思疎通と相互理解の必要性を示しています。
これでは防衛省は、自ら外交問題化させてしまった以上、外交の場から取り下げるか、一方的に協議を打ち切るしか無いでしょう。まさに藪蛇です。