中国通信大手ZTE 事業再開も茨の道? 安全保障上の懸念も

ZTE

中興通訊の研究開発拠点(中国・上海市)

 米国商務省は中国の通信機器大手・ZTE(中興通訊)とその子会社に対する制裁を解除し、すでにZTEは事業を再開した。しかし、懸案事項をすべて解決したわけではなく、ZTEにとって茨の道が続きそうだ。

7年のはずがわずか3か月で制裁解除

 商務省傘下の産業安全保障局(BIS)は2018年4月15日付けでZTEおよび同社の完全子会社の深圳市中興康訊電子を取引禁止顧客リストに掲載した。これにより、ZTEは米国の企業や個人を含む米国人との取引が禁止となり、米国人以外との取引でも中国国内の移転も含めて米国の輸出管理規則(EAR)対象品目の取引が禁じられた。(参照:中国通信大手ZTEが米企業と取引禁止に! ドコモなど日本企業への影響は?)  制裁の期間は2025年3月13日まで約7年間としたが、発動からわずか3か月弱の2018年7月13日に解除された。制裁解除は10億米ドルの罰金、4億米ドルの第三者預託、取締役会に相当する董事会の完全な交代、監視員の受け入れを条件とし、ZTEはそれらを了承して事業を再開した。なお、監視員の受け入れはZTEの社内に米国政府が選定した監視員を迎え入れて10年間にわたり監視を受けるが、それの費用はZTEが負担する。

信頼低下と顧客離れ

 取引禁止の対象品目には米国原産の物品、技術、ソフトウェアが含まれたが、基地局やスマートフォン(スマホ)を含めた携帯端末の開発と製造にこれらは必要不可欠だ。ZTEにとって最大の事業が基地局事業、その次が携帯端末事業で、この2大事業で売上高の9割前後を占めるが、制裁の影響でこれらの事業は停止に追い込まれた。  基地局事業では事業停止に伴い契約内容を履行できない事例が相次いで発生した。ウクライナでは4Gの展開計画に3ヶ月の遅延が生じた。また、新興国の通信事業者は通信網の設計や運用をZTEのような基地局ベンダに依存する場合も少なくないが、バングラデシュでは通信障害の復旧にも影響を及ぼしたという。  携帯端末事業では製造の停止に伴い出荷も停止したほか、一般消費者や通信事業者に通知なくソフトウェアの更新を中断するなどサポート面で不安が生じ、中国や豪州ではZTE製の携帯端末を販売中止した通信事業者もある。日本でも通信事業者各社はZTE製の携帯端末の調達が困難となり、すでに在庫は復活したが、NTTドコモが運営するドコモオンラインショップでも一時的に購入不可となった。  ZTEが発売した二画面のスマホ「ZTE Axon M」はNTTドコモが企画立案し、ZTEとNTTドコモが共同開発した。日本ではM Z-01Kとして発売したが、制裁の影響で一部の国では販売を停止し、発売自体を断念した国もある。外国での売上も一部はNTTドコモに入る契約で、影響の程度は別としてNTTドコモはその機会を失ったと言える。(参照:「折り畳み2画面」! NTTドコモが中国メーカーと手を組み斬新なスマホで世界を狙う理由)  基地局や携帯端末の両事業で影響が生じたが、すでに顧客離れが起きている模様だ。基地局事業ではイタリアのある通信事業者はZTEと通信網の高度化などで10億ユーロ相当の契約を締結したが、契約の半分程度しか履行できず、スウェーデンの競合他社に切り替えた。また、豪州のある通信事業者は自社ブランドのスマホの製造をZTEに委託していたが、中国の競合他社に切り替えた。このような事例はイタリアや豪州だけにとどまらないだろう。  顧客への誠意を欠いた対応や法令違反などは確実に印象を悪化させた。事業を再開できても信頼低下と顧客離れは仕方ない。
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安全保障上の問題で各国も敬遠
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