中国通信大手ZTE 事業再開も茨の道? 安全保障上の懸念も

今期は大赤字の見込み

ZTE

実機を撤去したZTEの販売コーナー(中国・杭州市)

 ZTEは2016年にも米国政府へ巨額の罰金を支払い、2016年通期は最終赤字となった。しかし、2018年の罰金は2016年よりも高額だ。さらに、2016年は事業の停止に至らなかったが、2018年は主要な事業を停止して減収に直結した。これからは顧客離れによる減収のほか、顧客との契約不履行で損害賠償を請求される恐れもあり、経営に与える影響は2016年より深刻だろう。  2018年上半期は株主に帰属する純損益が前年同期比441.24%減で78億2,419万人民元の大赤字を記録した。損失の主な要因は制裁の影響と認めており、2018年通期も最終赤字は確実と思われる。

追い打ちをかける安全問題

 ZTEは中国同業のファーウェイ(華為技術)とともに中国政府の諜報活動に関与する疑惑が取り沙汰され、安全保障上の問題が懸念されている。  米国では2019会計年度の国防権限法によって政府機関でZTEやファーウェイの製品やサービスの利用を禁じた。豪州政府は5Gの基地局に係る入札でZTEとファーウェイを排除した。英国やインドでもZTEやファーウェイを締め出す動きがある。  日本でも同様の動きがあり、産経新聞社の報道によると日本政府は情報システムの導入時にZTEやファーウェイ術を除外する方針を固めたという。官房長官記者会見でも話題に上り、菅義偉内閣官房長官はコメントこそ控えたが、様々な観点からサイバーセキュリティの向上に取り組む方針を示した。(参照:中国通信機器2社を入札から除外 日本政府方針 安全保障で米豪などと足並み ――産経新聞)  米豪のように名指しで除外すると中国政府の反発は必至で、日中関係は改善傾向にあるだけに、日本政府は中国政府に配慮して名指しせずに厳しい条件を課して排除する可能性もあるという。いずれにせよ、日本を含む世界各地でZTEやファーウェイは警戒の対象となっている。  それでも、ファーウェイは5Gの技術力やカメラを武器としたスマホなどで、基地局事業と携帯端末事業ともに存在感を高めているが、ZTEは状況が異なる。基地局事業では事業停止の影響も受けてか、5Gで先導的な立場を固められていない。ファーウェイの場合は安全保障上の問題も考慮しつつ5Gの早期商用化に向けて採用を検討する通信事業者も存在するが、ZTEは名前すら挙がらないことも多い。制裁解除後に発表した旗艦スマホも消費者目線では革新性や魅力に欠ける。しばらくZTEにとっては試練の時期が続くだろう。
ZTE製スマホ

豪州で販売中止したZTE製スマホ(豪州・キャンベラ市)

<取材・文・撮影/田村和輝> たむらかずてる●国内外の移動体通信及び端末に関する最新情報に精通。端末や電波を求めて海外にも足を運ぶ
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