注文された料理を出し終わり、ビールを口に注ぐ筆者(写真:倉田爽)
俺が経営していた小さなオーガニック・バー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」では、「必要以上に儲けない」が目標でありミッションだった。バブルが弾けて25年、ほとんどの人たちが暮らしも働き方も収入も右肩下がり。もう経済成長目指すこと自体が的外れなことは明白だ。
それなのに政治家や経済界は、いまだにマヌケな経済成長神話幻想をすがって無駄無益なことばかりしやがる。おかげでますます世の中が荒んできた。だから俺は「成長せずとも幸せな暮らし方と働き方ができること示す」という挑戦状を世の中に叩きつけてきたわけだ。
ミニマム(最小)な一人ナリワイで、世の中をどれだけマキシマム(最大)に変えうるか。それが14年前にバーを開業してから一貫したテーマだった。俺の中では、結果を得られたと思うから店を卒業(閉業)したのである。
他の飲食店の“逆バリ”で、お客さんを増やさない店を目指す
店内には洋楽邦楽問わず居心地よい音源たちが、お客さんを迎え待っていた
さて、そうした俺の店が成長を目指したなら、そりゃ「言語道断」と言われたに違いない。「売上拡大せずとも持続可能なビジネス論を、最小単位の一人ナリワイで明示したる!」と表面ヅラは飄々としながらも、実は心の奥では鼻息荒く歩んできたわけである。
もう少し本音を言うと「売上を追わない店のほうが愛されて長続きし、労働時間を短くしながら利益率を上げられる」と踏んでいた。一人で営むのだから「薄利多売」より「少売厚利」の方がラクに決まっている。だいいち、薄利多売で大手に勝てるわけがない。ジリ貧で忙しくなるだけだ。誰とも勝負しない独自のスタイルを確立することが、これからの時代のナリワイの秘訣だと確信していた。
飲食店が売上を上げる方法には、俗に、
1)来店数を増やす
2)客単価を上げる
3)回転率を高める
ことだと言われる。
だから、飲食店が売上を上げるための方法の“逆バリ”をしようと考えた。
1)むやみにお客さんを増やさない
2)お客さんに追加注文を促さない
3)回転率を下げる
ということを目標にしたのだ。