小泉進次郎ら自民党若手議員による国会改革案や参議院に提出された公職選挙法改正案は「改革の皮を被った党利党略」

モリカケも「スキャンダル」ではなく政策の問題

“特別調査会の設置を容易にすることを前提に、予算や法案の審議を行う委員会では、個別の「スキャンダル」案件の追及ではなく、法案審議を優先的に行うなど政策本位の審議を行うべきである。”
 これも、国会多数派(=与党)次第で、明日から変えられます。野党が予算委員会の集中審議を提案してきたら、議案のない衆院決算行政監視委員会や参院行政監視委員会の開催で、切り返せばいいのです。衆院決算行政監視委員会の委員長は立憲民主党ですし、野党も受け入れることでしょう。  それよりも、ここで気になるのは「スキャンダル」という言葉です。何をもって「スキャンダル」というのでしょうか。  まず、森友問題や加計問題、裁量労働制の拡大問題、防衛省日報問題は、政策の問題です。森友問題は、国有地の処分という政策決定過程の問題です。加計問題は、成長戦略の目玉とされる国家戦略特区の政策決定過程の問題です。裁量労働制の拡大問題は、政策根拠の問題です。防衛省日報問題は、政策検証過程の問題です。  次に、副総理の失言や財務事務次官のセクハラ問題、文科省局長の収賄問題は、政策執行を担う政府高官の適性の問題です。これらも、政策執行の問題です。  これらについて、予算委員会や他の委員会での質疑を制限するのは、政策本位の議論を遠ざけるだけです。もし、これらの問題の追及を止めさせたいならば、政策決定過程の記録を細かく残し、洗いざらい公表すればいいのです。それらの記録に問題がなければ、追及はすぐに静まります。
“党首討論や大臣討論により内閣の説明責任を強化する代わりに、総理や大臣の国会出席を合理化すべきである。(略)副大臣や政務官についても、国会出席の合理化を進めるべきである。”
 内閣の説明責任を強化するには、口頭質問の定例化に加え、質問に真正面から答えない答弁に対し、与野党ともに「問責」できるようにすることが必要です。1955年に削除された国会法第77条には、質問において政府がいい加減な答弁をした場合、問責できる規定がありました。これを復活すればいいのです。それをしないとしても、委員長と与党理事が、大臣に厳しく指導することが必要です。  それに加え、各委員会で議案等の詳細審査のための小委員会を設置することを慣例化すれば、大臣出席を減らしても、国会の行政監視機能は低下しません。最近、野党が様々なテーマで合同ヒアリングを開催していますが、小委員会はそれを国会の制度として組み込むイメージです。小委員会には大臣出席を免ずる代わり、副大臣、政務官、事務次官、経済産業審議官等の次官級の誰か一人が、省庁側の責任者として出席すれば、いいでしょう。
“国会審議をより政策本位にするため、国会審議を計画的に進める仕組みを導入すべきである。(略)野党は、審議拒否を武器に、与党から譲歩を引き出すことを目指すため、国会審議は日程闘争が中心になる。”
 これも、国会多数派(=与党)が決めれば、明日から実施できます。ただ、その壁になるのは、政府案を優先的な議題とすることです。野党とすれば、問題視する議案について、十分な審議時間を確保できないまま、あるいは問題点を明らかにしても政府与党がそれに耳を傾けなければ、審議日程での抵抗をせざるを得ません。また、政府与党の議案だけを審議するのでは、野党が対案を議員提出しても、議論は深まりません。  審議計画を実現するには、口頭質問の定例化と「野党議案の審議日」の設定が必要になります。野党議案の審議日は、議院内閣制の議会では珍しいものでなく、例えば月~木曜日を政府与党の議案審議日とし、金曜日を野党議案の審議日とするものです。野党議案の審議では、与党が質問し、野党が答弁します。それにより、野党の政策能力も与党に試されることになります。与党としては、野党に逆襲するいい機会にもなるわけです。
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自民党だからできる国会改革に挑戦を
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