小泉進次郎ら自民党若手議員による国会改革案や参議院に提出された公職選挙法改正案は「改革の皮を被った党利党略」

自民党案に「ある条件」をプラスして正反対の意義にする

 このように党利党略の自民党案ですが、国会の充実をもたらす効果も潜在的に有しています。ある条件を加えれば、魔法のように変化し、これまでと少し違う国会の姿をかたちづくります。  それは「特定枠を女性にする」という条件です。すると、当選可能性の高い各党の参院比例区の上位2名には、かならず女性が並ぶことになります。これは、本年5月に全会一致で成立した「政治分野における男女共同参画推進法」の趣旨にも合致します。  この条件を設ければ、国会の女性議員の少なさを改善する上で、大きな効果を発揮するでしょう。内閣府男女共同参画局の作成する「女性の政治参画マップ」によると、国会の女性議員割合(衆院9.5%/参院15.7%)は、他国と比較して154位という低さです。  もし、前回の参院選で、比例区の上位2議席が必ず女性であれば、女性議員割合は大きく増えていました。前回の参院比例区では、定数48議席のうち、女性の当選者は12人でした。単純に、各党の上位2位までの男性候補者が女性候補者に入れ替わったと仮定すれば、女性議員が9人増えた計算になります。すると、参院の女性議員の割合は、19.4%に上昇していました。  この条件には、もう一つの利点があります。知名度がなくても、団体の後ろ盾がなくても、専門的能力の高い女性を参院議員にしやすいということです。  それは、国会審議を充実させることに寄与します。想像してみてください。例えば、働き方法案の審議において、労働法制に通じた女性の大学教授が、首相や厚労相に直接、様々な疑問点を質問していれば、審議がより充実したでしょう。いわゆる「ご飯論法」を封じることができたかも知れません。  これは、政党側にとっても、能力のある候補者を口説くときにも有効です。選挙で候補者になるよう口説くときに困るのは、当選の可能性が見通せないことです。とりわけ、優秀な人ほど、現在のポジションで重要な役割を果たしているため、候補者になってもらうのは容易でありません。非拘束名簿式の参院比例区は、候補者の個人名での得票数が順位を決めますので、議員となれば間違いなく人々のために活躍できる人であっても、知名度や団体の後援がなければ、当選しにくいのです。  拘束名簿式のメリットは、候補者の知名度や団体後援を問わないことです。政党の候補者選抜さえしっかりしていれば、一般的な知名度をもたない専門家であっても、議席を得られます。  自民党案の動機が党利党略にあることは明白で、衆参ともに選挙制度の抜本改革が必要と考えています(あるべき選挙制度については機会を改めて論じたいと考えています)。それを前提としつつ、与党が数の力で自民党案を押し切ろうとするならば、この条件を付けるよう野党から求めることも、一つの選択肢です。
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