小泉進次郎ら自民党若手議員による国会改革案や参議院に提出された公職選挙法改正案は「改革の皮を被った党利党略」

小泉進次郎「国会改革案」を読む

 自民党の若手議員でつくる「2020年以降の経済社会構想会議」(橘慶一郎会長)は、6月27日に国会改革提言「よりオープンに、より政策本位で ~政治不信を乗り越えるための国会改革~」を二階幹事長に提出しました。同会議の小泉進次郎会長代理の知名度の高さから、小泉改革案などと報じられています。この提言についても、内容を精査してみましょう。
“行政の公正性に疑義が生じる場合、国会に特別調査会を設置し、国政調査権を発動することを認めるべきだ。(略)同調査会は、確立されたルールの下、参考人や証人の招致、資料提出等を通じて、エビデンスベースで冷静かつ客観的な調査を行い、徹底的に事実究明を行う。その上で、調査報告書をとりまとめ、これを公表することで、一定の結論を出す。”
 一見すると、なるほどと思えますが、実は既存の「常任委員会・特別委員会」でも同じことができます。国会法も、衆参規則も、一切変えなくて大丈夫です。国会多数派(=与党)が開催を決めれば、明日にでも可能です。  議案の審議に影響を与えたくないならば、衆院の「決算行政監視委員会」、参院の「行政監視委員会」で行えばいいのです。どちらの委員会も、提言どおりの機能を既に有しています。ちなみに、1月から始まった今国会(第196回国会)では、7月1日までの間、衆院決算行政監視委員会は2回、参院行政監視委員会は1回しか開かれていません。
“内閣の説明責任を強化するため、2週間に1回、党首討論や大臣討論を開催すべきである。党首討論を夜に開催し、より多くの国民が視聴できるようにするなど、充実した討議が行われる環境を整備すべきである。”
 これも、現在の国会法、衆参規則を変更せずに、国会多数派(=与党)が開催を決めれば、明日にでも可能です。それどころか、帝国議会では、現在の国会法に相当する議院法での根拠なしに、議員たちが先例を積み重ねて、同じことを実現していました。戦後の国会も、一時期まで行っていました。それが、廃れてしまっただけです。  それどころか、日本以外の議院内閣制の議会では、同様のことを議会のもっとも重要な役割として重視しています。議会が首相を選出する以上、議会には常に政府をチェックする役割があるからです。そのための制度を「質問制度」と呼びます。 「質問制度」は、議員が質問し、政府が答弁することを原則とします。議会が政府をチェックするための制度だからです。その上で、政府側に反問権を認めることもあります。「質問制度」は、口による「口頭質問」と、文書による「文書質問」に分かれます。イギリス議会では、開会中の月~木曜日、決まった時間に本会議場で「口頭質問」を実施しています。大臣が日替わりで登場し、議員の質問に答弁します。毎週水曜日は、首相答弁の日で、慣例で野党党首が質問に立ちます。  日本の国会法と衆参規則も「質問制度」を明記し、口頭も文書も可能になっています。ちなみに、文書質問は「質問主意書」と呼ばれます。単に、定例の口頭質問を実施していないだけなのです。  大切なことは、政局と無関係に、口頭質問を定例開催することです。イギリスは週4回、フランスとドイツは週1回、開催しています。2週間に1回という提言は、各国と比べて随分と及び腰です。せめて、毎週水曜日、夕方5時から8時までの3時間、開催してはどうでしょうか
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モリカケも「スキャンダル」ではなく政策の問題
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