トランプはオバマ時代に失った「中東での米国の存在感」を回復させることができるのか?

米国の威信復活なるか?

 ただ、トランプも安穏としてはいられない。自身の疑惑もさることながら、中東における今回のトランプ外交が米国の威信復活のスタートに成るかと思われた矢先に、米国議会の上院議員の一部がこの多額の武器の販売に反対を表明して、その一部の売却を阻止するための法案を提出する意向を示したのである。  その反対の理由はサウジがテロ組織を支援して来たことや、イエメンに仕掛けた紛争に正当性があるかが疑問にされているからである。議員が考えている削減幅は<500億ドル(5兆5000億円)程度>と見られている。即ち、今回の合意額の凡そ半分の武器の売却を阻止する構えなのである。(参照:「Arabia Watch」)  また、米国議員が反対する背後にはイスラエルの影響があるからということもある。イスラエルは今回のサウジの武器購入の合意の中には<THAADミサイルなども含まれており>、将来的にイスラエルの中東における軍事的優位を揺るがす要因になるとイスラエル政府は見ているからである。  サウジとイスラエルの関係は良好であると言っても、永続的に良好な関係が両国の間で保障されているわけではないとイスラエル政府は見ているのだ。(参照:「HispanTV」)  苦境に立たされるトランプだが、今回のサウジ訪問は米国の中東における存在感の復活という観点では、少しの前進を見たという向きもある。しかし、その道はまだ簡単なものではなさそうだ。 <文/白石和幸 photo/Official White House Photo Shealah Craighead(Public Domain)> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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