トランプはオバマ時代に失った「中東での米国の存在感」を回復させることができるのか?

イスラムNATOの目的

 イスラムNATOには次のような目的があるとされている。  加盟国の平和と安全の維持から始まって、加盟国の災害などによる復興支援や紛争解決に協力するといった事や、陸上、海上、空においてテロや海賊など敵の攻撃からの防衛といったことを提唱している。それは、北大西洋条約機構(NATO)の機能をそのまま模写したようなものである。NATOにおけるかつての敵ソ連が、イスラムNATOではイランという位置づけになる。  今回、トランプ大統領はサウジ訪問で、イスラムNATOの構築を鮮明に提唱したのであった。米国が考えているこの組織の核となる国はサウジ、アラブ首長国連邦、ヨルダン、エジプトである。ヨルダンは小国ではあるが、エジプトのムバラク大統領の崩壊の後、中東における米国のアラブにおける代理人という役目を担っているのがヨルダンのアブドゥッラ2世である。  サウジの首都リヤドでは、トランプ大統領は集まった54か国の代表を前にイスラム国などテロ組織との戦いで結束を求めたのであった。また、これまでのように米国からの支援は期待できないということも明言したのである。即ち、アラブ諸国同士で自主的結束を促したのである。  集まったアラブ諸国の代表にとって、米国と共に敵が誰であるのかということをトランプ大統領は明確にし、その為の米国からの協力は惜しまないと伝えたのであった。トランプのこの姿勢を前にして、アラブ諸国はオバマ前大統領の時に欠けていた米国の指導力の復活を確認したのである。
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それぞれの「メリットと思惑」
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