2011年からスタートした野球塾には、今では30人を超える門下生が在籍している。
工場を改装し、知り合いに頼み込み10万円程度の出費で完成させたという国木の“手作り“室内野球場では、毎夜夢に向かって邁進する野球少年達が汗を流している。
「今思うと、野球を始め小学校からずっと誰かの期待に応えるため野球をしていたと思います。それが一度野球を離れたことで、自分が野球に育てられたことを理解できるようになった。ただ、プロでやっていくには自分の場合、技術面に加え、圧倒的にメンタル面が足りなかった。今の若い選手達は技術は高い。だからこそ、メンタル面の重要性を伝えていっています。私自身はプロとしては大成できませんでしたが、元プロだったからこそ伝えられる経験もあると思うんです。決して儲かる仕事じゃないですが、今が野球を一番楽しめていると自信を持って言えますね」
国木が育てた若い才能達は、光星学院高等学校、平安高校、上宮高校といった名門で徐々に頭角を現し始めた。プロの世界では大きな注目を浴びることはなかったかもしれない。だが、国木が野球にかける情熱は、次世代を担う子供達に着実に継承されていている。
<取材・文/栗田シメイ>