「生肉愛好家」が密かに目指すタイ。でもやっぱり危険!

それでも口コミで訪れる日本人客

 そんな中、在住日本人の紹介である店に足を運んでみた。プラカノン・ソイプリティー43というバンコクの東寄りの下町にある、店名のない屋台だ。ここの店主ヨットさんは隣国ラオスに隣接するタイ東北地方ウボンラチャタニー県出身。周辺に暮らす東北出身の若者相手に始めたこの屋台は3年目を迎えている。東北地方料理といえばパパイヤのサラダであるソムタムなどが有名だ。  ヨットさんはバンコクやタイ国外の和食店で働いた経験があり、肉の選別に自信がある。そこで小さく始めてみたのがレバ刺しや牛刺しだった。レバ刺しは一皿70バーツ(約225円)。同じ量を日本人経営の飲食店で注文すると250バーツ(約810円)はする。ここは屋台らしく安く提供する。

タイ国内外で和食店での勤務経験のある、屋台店主ヨットさん

 これが一部の日本人に知られ、日本人居住者もいないような場所にも関わらず、日本人客が口コミで訪れている。食べ方もごま油に粗塩といった日本スタイルで提供しているという。味もいいとわざわざ足を運ぶ日本人客にも好評で食中毒が出たという話も聞かないが、やはりここはタイ。食中毒や肝炎や、食肉解体時の衛生基準などが徹底していて冷蔵技術なども整備されている日本でも起こるだけに、やはり生肉食はオススメできない。  その代わり、ヨットさんは料理一筋に生きてきた職人であり、ほかの料理も素晴らしい。特に牛肉炭火焼き、日本人が好きなコームーヤーン(豚トロ炭火焼き)、豚タン、豚の乳房など、肉料理はどれもハズレなし。内臓を盛りだくさんに入れたスープのトムセープは高級店で食べても内臓の臭みがやや気になるが、ここはまったく感じない、絶品といえる味わいだった(もちろん、これはあくまでも筆者の感覚であり、生肉を食べずとも屋台料理なので、絶対に食中毒はないとは言えない)。  ヨットさんはかなりブロークンではあるが日本語を話せるので、注文はタイ語ができなくても問題ない。生肉食はオススメしないが、一度訪れてみてもいいかもしれない。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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