北朝鮮の内閣府観光総局に属す朝鮮国際旅行社は、北朝鮮の国内に5、6社ある外国人向けの国営旅行会社のうちの1社で、同社は、すべての日本人を担当している。つまり、どの手配旅行会社で申し込んでも日本人客は全員同社が現地アテンドをするようになっている。
朝鮮国際旅行社には、日本人の年間訪朝者500人というノルマが課せられている。この人数には在日朝鮮籍や帰化した人は含まれない。昨年も日本人の訪朝者は130人前後だと推定され、当然ながらノルマは達成できていない。そればかりか2002年以降は、おそらく1度も達成できていないと思われる。ノルマ未達成時にどのような罰則があるかは不明だが、KITCは、この昨今の日朝関係を考える限り非現実的とさえ思える年間訪朝者500人というノルマを達成すべく、大胆な開放が始まった2013年頃からさまざまな形で「営業」を強化し始めている。
たとえば、現地ガイドが、A社を通して訪朝している日本人に対して、旅費が高いからとより安い旅行会社を勧めたりし始めたのだ。
これは今まで苦楽をともにしてきたA社との関係性を知る者にとってはかなり驚きの事態だった。
そして、そんな状況が昨年11月ごろから加速している。
これまでは、“日本の総代理店”であるA社への配慮なのか、KITCが直接、エンドユーザーへ連絡することはなかったのだが、昨年11月ごろから北朝鮮へ複数回訪れているリピーターへ再訪朝を促したり、興味がある友人を紹介して欲しいと直接アプローチするという“A社パッシング”とも言えるような行為が行われているのだ。もちろん、過去に前例はない事態である。
しかも、KITCから直接連絡をもらったある人物は、A社からの嫌がらせや妨害が怖いと伝えると、「A社は私たちが抑えるので心配しなくてもいい」と返答があったそうだ。兄弟会社とまで言われていたA社との関係に変化が起こっているのかもしれない。