「ロケット」という言葉を聞くと、漠然と「宇宙へ向かってまっすぐ飛んでいく機械」という印象がある。しかし、厳密には、宇宙へ向かって飛ぶロケットには「人工衛星打ち上げロケット」と「観測ロケット」の、大きく2種類がある。
「人工衛星打ち上げロケット」というのは、文字どおり人工衛星を打ち上げるためのロケットで、有名な米国のスペース・シャトルや、日本のH-IIAロケットなどがこれにあたる。先端に載せた人工衛星を、秒速7.9kmという途方もない速度にまで加速させ、地球の周囲をまわる軌道に投入する。
一方、「観測ロケット」は、人工衛星を打ち上げることはできない。地球からほとんどまっすぐ上に向けて飛ばし、高度だけは宇宙空間(高度100km以上)に到達するものの、軌道に乗るために必要な速度は出ていないので、そのまま放り投げたボールのように落ちてくる。ちなみに英語だとSounding Rocket、もう少し広い定義だとSub-Orbital Rocketなどと呼ばれる。
人工衛星と観測ロケット(Sub-Orbital Rocket)との違いを示した図。スペース・シャトルなどは図の上に描かれた円弧のように、地球の丸みに沿って飛び続けるが、観測ロケットは下の赤い線のように、放物線を描くように飛んで落ちる Image Credit: JAXA
両者は目的によって使い分けられる。人工衛星打ち上げロケットは文字どおり、通信や放送、気象観測などを行う人工衛星を打ち上げるときに使われる。一方の観測ロケットは、人工衛星を使うほどでもない宇宙観測や実験を行う場合や、人工衛星だと落下してしまうような上層大気に重点を置いた観測、あるいは上空から宇宙にかけて”縦”方向に観測したい場合などに使われている。
観測ロケットのほうが安価で打ち上げやすいというメリットはあるものの、基本的にはどちらが上、下ということはなく、単に宇宙のどこを、どのように観測したいか、という目的によって使い分けられていると言ったほうが良い。