「オレはこの国の未来を輝かせたい」
朝礼でこう話すのは政治家ではなく、出版関係のA社長です。これからA社長のお話をする前に、まずお伝えしておきます。この社長は本気です。その目的に向かって本気で考え、本気で動いています。
起業してから3年が過ぎ、3名でスタートした会社も今や30名になろうとしています。
「本が教育を、そして未来を創るんだ」
そんなA社長が最も熱心に学んだのが「理念経営」。A社長ご自身の理念を会社の理念とし、社員に対し熱く語ることで想いを浸透させてきました。時には研修で、時には朝礼で、そして時には明け方まで飲み明かして社員に語りかけてきました。
「苦しんで生みだした物は本物だ」
A社長はいつでも本気です。本気だからこそ全力で走り続けます。そんな男だからこそ、ストイックで、自分を追い込むことが苦にならないのです。
クライアントからの無理な依頼にも「まだまだ限界じゃない」と突っ走るのです。だから、深夜0時を回ってもお構いなし。土日に出勤しても仕事はやり遂げる。いや、深夜や土日を使ってまでもやり遂げた仕事は美しくすらあると考えてしまうのです。この達成感を皆で共有したい。
「いつでも全力で走る。そんなオレの背中を見てくれ」
創業時のメンバーも思いは社長と同じです。A社長のもとに集ったメンバーは、ひたすら社長の背中を追いかけてきました。休みの日にも飛び交うLINEも、深夜におよぶ会議も、深夜2時からスタートする飲み会で社長が語る熱い想いも、創業メンバーにとってはすべてが最高の時間なのです。
「うちのメンバーはみな同じ旗に集う」
長時間労働も、深夜残業も、休日労働も、激しい叱責も「すべては“日本の輝く未来のために”避けては通れないのである」。また、「こういう逆境を乗り越えた者は一回りも二回りも大きくなる」という幻想を抱き、それをすべての社員が受け入れていると誤解してしまうのです。
起業したころの熱い想いのすべてを、新しい社員にも求めるのは無理があります。理念には共有できるかもしれませんが、そこへ向かう速度や温度差があることをA社長は理解しなければならなかったのです。