タイ人からも「不況」を嘆く声が。タイ経済の今後はどうなる?

それでも残る不安要素

クロントーイ港港湾局所有の土地を占拠しているクロントーイスラムは、2014年に欧州の軍政への制裁措置の影響をすぐに受けた場所でもある

 もちろん、不安要因がないわけではない。短期的には、国民に愛され尊敬されているタイ国王の体調である。今年89歳となるプミポンアドゥンヤデート国王陛下は今年12月に89歳になるが、6月には心臓の手術を受けている。この手術により容態改善の朗報が流れたのだが、8月9月は微熱や感染症などで入退院を繰り返しており、タイ国外では国王陛下の容態がタイ経済を左右する可能性が高まっていると報道された。  また、中長期的には、タイを中心に東南アジア諸国のインフラも整いつつあることで、その先を行っていたタイが周辺の途上国の追い上げで外国からの投資を周辺国に奪われ、その一方で技術力の停滞などが要因となって「中進国の罠」に陥る可能性があることだ。  タイが中進国の罠から抜け出すためには、「宵越しのカネを持たない」気質から脱し、教育や技術開発など先を考えるようにシフトしていく必要がある。しかし、その一方で、その気質こそがタイを長期的な景気停滞から遠ざけていたという側面も否めない。  東南アジア随一の経済国であるタイ。中進国の罠を抜け出し、先進国入りするか否かの岐路に立っているのかもしれない。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)、協力/PERSONNEL CONSULTANT MANPOWER(THILAND)CO.,LTD>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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