1954年にもう一つの看板商品「シウマイ弁当」が登場
さて、このような苦労の末に、1928年に念願の横浜新名物シウマイを発売、そのシウマイに「横浜蒲鉾」「酒悦の福神漬」という人気商品を加えた、売れ筋のラインナップで崎陽軒の経営はようやく軌道に乗ります。
一方で、駅の売店からスタートしたこともあり、駅弁にも強いこだわりを持ち続けていた崎陽軒は、太平洋戦争が終わると、後の2代目社長・野並豊の陣頭指揮の下、もう一つの看板商品の開発に着手します。それが1954年に発売されたシウマイ弁当でした。
開発にあたっては、駅弁の定番形式「幕の内弁当」をベースとしながらも、崎陽軒ならではのオリジナリティを出す、そして戦後間もない時期のお腹を満足させるため、800kcalを確保する、というのがテーマとして設定されます。
幕の内弁当の定法を守りながら、見事にオリジナリティを出す
研究の末、完成した初代シウマイ弁当と中身はというと、主役のシウマイ4個に加えて、ブリの照焼、玉子焼き、横浜蒲鉾、エビフライ、酒悦の福神漬、筍煮、昆布佃煮、そして御飯というラインナップでした。御飯は今と同じように俵型の型押しでしたが、ゴマと小梅は付いていなかったようです。ちなみに、シウマイ弁当の御飯は冷めてもモチモチしていて美味しいですが、これは釜や炊飯器ではなく、木の桶に高熱の蒸気を直接注入して、蒸しながら炊き上げる『蒸気炊飯方式』をとっているためです。
幕の内弁当の厳密の定義というものは特に存在しませんが、
大まかな定義として、御飯に対して汁気のないおかずを少しずついろいろ詰め合わせるのが一般的であり、特に焼き魚・玉子焼き・蒲鉾・揚げ物・漬物・煮物が代表的なおかずとされています。それを踏まえて、上記の中身を眺めてみると、幕の内弁当の定法を守りつつ、見事にオリジナリティが加えられていることが分かります。
また、シウマイ弁当といえば、経木の折の弁当箱も特徴的ですが、経木の折は吸水性に飛んでいるため、ご飯のモチモチ感を持続させるだけでなく、ほのかに移った木の香りが楽しめる魅力があります。個人的には本格的に食べ始める前に、蓋の裏についた米粒を剥がしながら食べるのも、プロローグっぽくて好きです(笑)。