大西卓哉飛行士、宇宙へ出発。これからの日本の有人宇宙開発はどうなる?

ISSの先を見越す各国

 欧州は独自の宇宙船をもっていないが、ISSへの参加を通じて基礎的な技術を手に入れ、現在は前述の米国の計画に付き従っており、オライオン宇宙船の中の、バッテリーやエンジンなど重要な部分の開発を担当している。これにより、米国主導の計画の中にあってもある程度強い発言権をもつことができ、たとえば将来、いざ有人火星飛行を実施する段になれば、その宇宙船に乗り込む飛行士の中に、欧州出身の飛行士を乗せるよう要請することができよう。  米国と同様にISSの主導的な位置にいるロシアは、ISS終了後に、自国の居住区画(モジュールという)の中から比較的新しいものだけを分離させ、独立した宇宙ステーションとして運用する構想をもっている(米国や欧州、また耐用年数が過ぎたロシアのモジュールなどは、そのまま廃棄される)。また有人の月探査計画ももっており、そのための新しい宇宙船「フィディラーツィヤ」の開発も進んでいる。  ISSには不参加ながら、独自の宇宙船を保有する中国は、米国ともロシアとも距離を置き、独自の道を進みつつある。現在中国が熱心に取り組んでいるのは宇宙ステーションの建造で、2020年代には複数のモジュールを組み合わせた大型のステーション「天宮」の建造を目指している。すでに2011年には、小型の宇宙ステーションを打ち上げ、ドッキングや宇宙飛行士の滞在などの試験を行っており、今年9月にもその2号機を打ち上げることが計画されている。また、ステーションに物資を補給する無人船の開発や、月や火星まで飛行できる宇宙船の開発も進んでおり、少しずつ力を蓄えつつある。  そしてインドもまた、有人宇宙船の開発に乗り出している。2014年には新しい大型ロケットの試験打ち上げの機会を利用し、有人宇宙船の飛行試験を行った。今のところ、宇宙ステーションを建造したり、月や火星に行ったりといった具体的な計画は明らかにされていないものの、2020年代にはインド人がインド製の宇宙船で宇宙に飛び出すことは十分にあり得る。  このように、世界各国は2020年代以降、とくにISS計画終了後の有人宇宙開発に関して、計画や検討、構想といった程度の違いはあれど、また今後変更される可能性も十分あれど、すでに見通しをもっている。  しかし、日本にはこうした計画や検討、構想はなく、ISSの後にどうするのか、あるいはどうしたいのかは不透明な状態にある。
次のページ 
これからの日本の有人宇宙開発はどうなるか
1
2
3
4
5
6