海外で話題沸騰中のニーチェ本にみる、日本の教育政策の危うさ

「学問によって身を立てる」という考えの愚

 昨年、英訳刊行されたニーチェの『ANTI-EDUCATION』(NEW YORK REVIEW BOOKS CLASSICS EDITED BY PAUL REITTER CHAD WELLMON)が海外で話題を呼んでいる(邦訳は無し)。  これは、1872年にバーゼルで行われた全6回に渡る講演を記録したもの。当時のドイツにおける教育(教養・主にギムナジウムと大学)の問題点が、年老いた哲学者と弟子による対話形式から明らかになる。  まずニーチェは、“教育によって身を立てる”、その考え自体が誤りなのだと断じる。
<生存競争を勝ち抜き、生きたいと願うのならば、多くを学ぶ必要があると言える。だが、そのような利己的な目的から得られるのは、本来の教育や文化とは全く関わりのないものばかりだ。>(筆者訳)
 もちろん、キャリアへの野心を一概に否定するのは難しい。しかし、それが教育の名の下に野放しにされている状態が問題なのだ。
次のページ
教育を職業上の自己実現の動機付けにする弊害
1
2
3
4
5
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会