海外で話題沸騰中のニーチェ本にみる、日本の教育政策の危うさ

教育を職業上の自己実現の動機付けにする弊害

 教育を職業上の自己実現に動機づけする弊害は、同様にジョルジュ・バタイユも指摘している。
<人間を襲う最大の害悪は、人間の実存を隷属的な器官の状態に貶める害悪だろう。ところが誰一人として、政治家、作家、学者になることは絶望的なことだと気づかない。気づかれることのない欠如を直すことは難しい。人間社会の役割の一つになるためだけに完全な人間になることを断念する人、こんな人を蝕んでいる完全性の欠如を直すのは難しい。>(『魔法使いの弟子』 景文館書店 訳・酒井健)
“就職に強いから”といった理由で学校や学科を選ぶのが当たり前になった現代。しかしそのためにすすんで専門性を狭めることは、
<何かの機械を作るのに必要な部品を作り続ける工場勤めの人生と同じで、究めたところで、“ネジだのハンドル作りだのの匠”と呼ばれるのが関の山だろう。>
(筆者訳、以下同)とニーチェは斬り捨てている。  こうしたニーチェやバタイユの議論は、理想論なのかもしれない。実際問題、職を得て生活を安定させたいのはいつの時代でも変わらないし、それ自体間違った考えではない。しかし、繰り返しになるが、その手助けを教育に求めるのがお門違いなのである。  では、ニーチェの考える教育とは、一体どんなものなのだろうか。
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ニーチェの語る「教育」の意義
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