2020年はコロナ禍でも日本映画の傑作が続々と生まれた1年だった!

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画像はイメージ(adobe stock)

 誰もが新型コロナウイルスに振り回された2020年が終わり、新年を迎えた。多数の海外の大作映画が公開延期となり、映画ファンとしても辛い一年であったが、その中でも素晴らしい作品、特に日本映画の傑作に多く出会うことができた。ここでは、筆者が独断と偏見で選出した2020年のベスト映画10を紹介しよう。

10位『ミッドサマー』

 若者たちがスウェーデンの奥地の村で行われている祝祭に赴き、阿鼻叫喚の地獄絵図を目の当たりにするという物語だ。パッと見のビジュアルだけでも「カラフルで明るいのに不穏」というわかりやすい特徴があり、SNSを中心に「ヤバそう」なことなどが口コミで広がった。R15+指定で、過激な性描写があり、グロテスクな画もはっきりと映るという、明らかに人を選ぶ要素がありながらも、日本でもスマッシュヒットをすることになったのも納得だ。  導入部こそ「ある土地に訪れた若い男女が恐ろしい目に遭うスタンダードなホラー」であるが、監督は本作を「ホラーではない」と主張している。実際に「怖くなかった」という感想を持つ方も多く、「失恋ムービーであり、おとぎ話でもあるし、ダークコメディでもある」などと、多様な見方ができるのも面白い。「ワッ」と大きな音で驚かすような演出が完全に避けられており、じわじわと恐怖や不安感を煽る空気感が全編で構築されていることも重要だった。  本作は、(意図的に歪んだ形で)女性の解放を描いた作品であるとも言える。序盤から主人公の女子大生は、ただでさえ家族を事故で失って精神が不安定になっているのに、さらに「周りはほぼ全て男性」というメンバーで、下ネタの会話が平然とされる中で旅立っている。その彼氏も、主人公に対して「間違った対応」をしてしまったりもする。そのような女性にとって抑圧的であったり、居心地の悪かった環境が、祝祭の場に降り立つことで、どのように変わっていくかに注目すると、さらに興味深く観られるだろう。 【もっと詳しく】⇒『ミッドサマー』明るい地獄なのにホラー映画ではない「3つ」の理由

9位『のぼる小寺さん』

 ボルダリングに一直線な女の子と出会った少年少女が、少しずつ変わっていく様を描いた群像劇だ。キャラクターがそれぞれ愛おしく、ちょっと変人だけど純粋な性格の小寺さん、そのがんばっている姿を見ているだけだった卓球部員の少年、“隠キャ”だけど心優しいボルダリング部の少年、不登校気味でギャルっぽく見える少女、写真に興味があるのに周りにそのことを言えない少女、それぞれが「本当にこの世にいるとしか思えない」存在感を放っている。主演の工藤遥をはじめとした、旬のキャストがそれぞれの個性を生かした役にベストマッチだった。  2020年はコロナ禍で、多数の大規模な大会やイベントが中止になり、学生たちが通常の部活動を行うのが難しいという状況が続いていた。そんな中で、がんばっていることそのものだけでなく、がんばっている誰かの姿から良い影響を受けることの尊さを説いた本作は、がんばれないでいる今の若者たちにとってもエールになるだろう。個人的にも、何も大きなことをなし得なかった青春でさえも「あなたも、あの時にがんばっていたんだよ」と肯定してくれている本作は、一生に渡って大切にしたい映画になった。  また、2020年には同じく部活を題材にした青春映画『アルプススタンドのはしの方』も大評判を呼んでいた。こちらはタイトル通りに甲子園球場の観客席の端っこにいる少年少女を映し続けることで、「しょうがない」と諦めざるをえなかった彼らの青春の痛みに優しく寄り添う物語であった。『のぼる小寺さん』と合わせて、今の高校生たちに観てほしいと願うばかりだ。 【もっと詳しく】⇒『のぼる小寺さん』は『桐島』の再来となる青春映画の傑作!「がんばること」を肯定する物語がいま必要な理由とは
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夫と思しき透明人間から襲われ続けるホラーサスペンス
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