群馬県草津町の「町議リコール」住民投票がはらむ、性被害の事実以前の大きな問題

住民投票の結果

まだまだまだまだ  草津町というのは、温泉を資源にビジネスをしている人が多く暮らしているため、町長や議員を敵に回すことは、イコール、この地で商売ができなくなってしまうということであり、非常に閉鎖的な町です。議員になる人も、ホテルや旅館の二代目や三代目だったりして、そもそも町長に逆らうような人はいません。  リコールを問う住民投票をするためには、その前に有権者の3分の1以上の署名が必要となるため、そこそこ高いハードルがあるわけですが、いとも簡単にクリアしてしまったのは、やはり町長や議員に言われたら断れないという村社会が原因の一つです。実際、住民投票をするために集まった署名の数は3317筆でしたが、投票に行ったのは2750人しかいませんでした。署名は、どこの誰が署名をしたのかが一発でわかってしまうので、名前を書かないわけにはいかないのですが、投票は行かなくてもバレないということで、署名はしたけど投票はバックレる町民が続出。 町民の方々に住民投票をどう思うかを聞いても、だいたいは「興味がない」という答えでした。「新井祥子さんのことをよく知らないから」とか「何が本当かなんて自分たちに分かるはずがない」とか、聞けば聞くほど「そりゃそうだ」という答えばかり。インタビューできた人数が少ないとはいえ、この住民投票に積極的な人に出会うことはできませんでした。要するに、中高年男性である町の議員たちは草津温泉の源泉ばりに高い温度で「リコールしよう」と訴えていたけれど、町の人たちはすっかり湯冷めしていたと言ってもいいのかもしれません。ただ、この住民投票は、圧倒的な賛成多数でリコールが成立し、新井祥子議員は失職することになりました。 賛成:2542票 反対: 208票  投票率は53.66%でした。2019年4月に行われた草津町議選の投票率が69.49%だったので、けっして関心が高かったとは言えない数字です。それでも、投票した町民の約9割は「賛成」に投じたことになり、日本のムラ社会の恐ろしさを目の当たりにすることになりました。

町単位の「イジメ」にすら見えてくる

 これだけ町のアチコチに「新井議員をリコールに!」というポスターが貼られ、町が主体となって訴えているわけですから、ここまでやれば、ほとんど事情を知らない人でも「賛成に投じた方がいいのかな」と思ってしまうことでしょう。しかし、それはもう町長と女性議員の間にどのようなトラブルがあったのかという真相以前に、非常に大きな問題があると言わざるを得ません。 ① 警察の捜査や裁判の結果が出ていない段階での住民投票である。 ② 公平性を担保すべき自治体が、一方の側に投票を誘導している。 ③ 超デリケートな問題にもかかわらず、一切の配慮が感じられない。  もはや「町単位のイジメ」にも見えてきます。もちろん、新井祥子さんの証言がすべて嘘だとしたら、町長はとんでもない冤罪を仕掛けられていると言えます。だから警察に訴え、裁判でも訴えているのでしょう。しかし、いずれもまだ結論は出ていないのです。それなのに、町中にポスターを貼りまくり、観光客にまで恥部を晒し、コロナ禍に町民を巻き込んで住民投票させているのです。本当に草津町の誇りや信頼を失わせているのは、一体、誰なのでしょうか
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日本全体で考えなければいけない問題
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