群馬県草津町の「町議リコール」住民投票がはらむ、性被害の事実以前の大きな問題
2020.12.07
住民投票の結果
草津町というのは、温泉を資源にビジネスをしている人が多く暮らしているため、町長や議員を敵に回すことは、イコール、この地で商売ができなくなってしまうということであり、非常に閉鎖的な町です。議員になる人も、ホテルや旅館の二代目や三代目だったりして、そもそも町長に逆らうような人はいません。
リコールを問う住民投票をするためには、その前に有権者の3分の1以上の署名が必要となるため、そこそこ高いハードルがあるわけですが、いとも簡単にクリアしてしまったのは、やはり町長や議員に言われたら断れないという村社会が原因の一つです。実際、住民投票をするために集まった署名の数は3317筆でしたが、投票に行ったのは2750人しかいませんでした。署名は、どこの誰が署名をしたのかが一発でわかってしまうので、名前を書かないわけにはいかないのですが、投票は行かなくてもバレないということで、署名はしたけど投票はバックレる町民が続出。
町民の方々に住民投票をどう思うかを聞いても、だいたいは「興味がない」という答えでした。「新井祥子さんのことをよく知らないから」とか「何が本当かなんて自分たちに分かるはずがない」とか、聞けば聞くほど「そりゃそうだ」という答えばかり。インタビューできた人数が少ないとはいえ、この住民投票に積極的な人に出会うことはできませんでした。要するに、中高年男性である町の議員たちは草津温泉の源泉ばりに高い温度で「リコールしよう」と訴えていたけれど、町の人たちはすっかり湯冷めしていたと言ってもいいのかもしれません。ただ、この住民投票は、圧倒的な賛成多数でリコールが成立し、新井祥子議員は失職することになりました。
賛成:2542票
反対: 208票
投票率は53.66%でした。2019年4月に行われた草津町議選の投票率が69.49%だったので、けっして関心が高かったとは言えない数字です。それでも、投票した町民の約9割は「賛成」に投じたことになり、日本のムラ社会の恐ろしさを目の当たりにすることになりました。
町単位の「イジメ」にすら見えてくる
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