群馬県草津町の「町議リコール」住民投票がはらむ、性被害の事実以前の大きな問題

「町がリコールを主導」する公平性の無さ

そこらじゅうにはられる辞職賛成を促すポスター  今回の新井祥子議員のリコール住民投票は、明らかに「町ぐるみ」で仕掛けられています。これはとても深刻で重大な問題です。本来、自治体というのは住民投票の公平性を担保しなければなりません。賛成するか反対するかはあくまで「住民の意思」で決められるものであって、町がどちらかを推奨するということがあってはならないのです。ところが、草津町では公民館や児童室といった公共施設の駐車場にポスターが貼ってあって、新井祥子議員のリコールに賛成するように促していました。 「賛成にまる」とまで ポスターには思いっきり「新井議員をリコールに!」と書いてしまっているし、「賛成にマル」というイラストまで載っています。百歩譲って、どこかの家の壁や飲食店の窓に貼ってあるのなら、家人やオーナーがリコールさせたいと思っている人なのだろうということで話も終わるのですが、公共施設の駐車場にこれを貼り始めたら、それはもう自治体が住民に対し、リコールに賛成するように促していると言っても過言ではありません。

訪れた観光客が真っ先に目にする「あのポスター」

町の玄関にも貼られるポスター

町の玄関にも貼られるポスター

 駐車場だけなら、もしかしたら間違えて貼ってしまったのかもしれないと思えるのですが、「新井議員をリコールに!」のポスターは、まさに草津温泉の玄関とも言うべき「草津温泉バスターミナル」の入口の窓にも貼ってありました。 町の玄関にも貼られている こんなにイカれた話はありません。考えてもみてください。このバスターミナルは、これから草津温泉を楽しもうという観光客が最初に訪れる場所です。いつもだったら、このターミナルでバスを降りた瞬間、いかにも温泉っぽい硫黄の香りが鼻を刺激し、これから訪れる旅館やお風呂への期待感が膨らみ、思わず「草津温泉駅」と書かれた窓をバックに写真の1枚も撮りたくなるところです。しかし、このポスターは「ようこそ草津温泉へ!」という挨拶の前に、いきなり「この町には、草津町の誇りと信頼を失墜させた新井議員というヤバい奴がいるんですよ!」をアピールしているに等しいのです。それで「何なんだ?」と検索したら、女性議員が町長から受けたとされる性被害を告発したところ、なぜか議長からリコールを仕掛けられ、皆さんにお名前を晒されていることを知るのです。だいぶ印象悪いです。
街宣車まで

街宣車まで。誰がカネを出しているのか。。。

 しかも、僕がこの町で最初に目撃したものは、住民投票で「賛成」に投じましょうと呼びかける車です。こんなものを誰がお金を出して走らせているのか知りませんが、ここまで来ると、もはや気に入らない女性を町全体でリンチしているようにしか見えません。百歩譲って、告発がまるっきり嘘だったとしても、草津町では「村八分」になると、こんなことをされてしまうというものを見せつけられている気がします。
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まるで「ミソジニーの湯」
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