遠い未来を見る心の余裕やスペースが生まれることが大事
心の病に悩み苦しんでいる相手に対して、周囲が「正しさ」を盾にして「責任」 を押し付けていくと、究極的には「生きていること」がすべての原因だと追い詰めてしまうことがあります。
「生きている」からこうなってしまったのだ、と。そうしたことは、SNSやネット世界の中での相手を中傷し批判する言葉の濁流がそういう状況を少しずつ作り上げて、追い込んでいきます。
そうした考えに閉じ込められてしまうと逃げ場がありません。考えが煮詰まっていくと、自己否定や絶望から自死へと至る悲劇も起きてしまいます。
因果論で現在の状況を理屈で考え詰めていくと、そうした最悪の事態に陥ることがあります。だからこそ、そうしたときにふっと未来へと視点が向き、それも近い未来ではなく、遠い未来を見る心の余裕やスペースが生まれることが大事なことです。周囲もそうしたことに心を配る必要があります。
そうした視点の切り替わりが起きるためには、まず悩み苦しむ相手から「自己否定」「自己責任」といった重荷を、一度取り外すことが大事なことです。周囲の者たちが協力して、自然治癒力という心の復元力がうまく働く土台を準備することこそが大事なのです。
本当に「休む」ことさえできれば、自然治癒力が適切に発動する
ただ現実には、周囲の者たちが本人の自然治癒力を損なうように動き、追い詰めて逃げ場がない方向へと言葉を投げかけている場合も多いので、注意が必要だと思います。周囲の者たちが、自然治癒が働きやすい土台を作っているのかどうか、改めて考え直してみる必要があります。
そうして自然環境を育むような丁寧な環境整備によって、「治ろう」という生命の自然な欲求が生まれる土壌ができます。そもそも、「生きている」こと自体が前向きなことなのですから。生命の働きを阻害しないようにすることが大切なことです。
周囲が手助けをして、「自己否定」や「自己責任」という言葉や思考回路と自分との切り離し作業を行ってみます。一度でもいいから重荷がなくなり、心に余裕ができた状態を体験してもらいます。
見えざる圧力から逃れた状態を感じてもらい、ゆっくりと音楽を聴くように良質な他者の言葉や思いやりに身心を浸せば、自分の考えだけが同じ場所を堂々巡りせずに別の思考の水路が生まれてくるのです。
そうしたプロセスにより、自分の心の体勢を整える余裕が生まれてきます。現代社会は「休む」ことができません。本当に「休む」ことさえできれば、自然治癒力が適切に発動してきます。「休む」技術や環境整備こそが、今の社会には求められています。