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SARS-CoV-2(新型コロナウィルス)による致死的なな伝染性全身感染症、
COVID-19の第一次パンデミック*も、本邦では東アジア、東南アジア、大洋州全域を覆った「
謎々効果(理由が科学的・医学的に立証されていないが感染者数や重症化率、死亡率などが日本を含めた東アジア、東南アジア、大洋州において著しい低いことを筆者はこう呼称している)」により欧米の1/100の犠牲という驚くべき軽度で済みました。現在本邦は、再び社会活動を開始しつつあります。
〈*一般には、昨年12月からのSARS-CoV-2パンデミックを第一波、今年冬に北半球に襲来すると考えられるより深刻なパンデミックを第二波と呼称するとされてきたが、現実には、第一波パンデミックのなかでのspike(棘、ヒゲ)やsurge(うねり)を第二波、第三波と呼称する様になっている。正式な呼称が確定するまで筆者は現在のパンデミックを第一次パンデミック第一波、第二波等と呼称し、冬に襲来するパンデミックを第二次パンデミックと呼称している。(真珠湾空襲からヒントを得ている。)〉
こういった中、とくに不特定多数の集団を形成する学校などで懐かしの消毒*が復活するなど、消毒にまつわる話題がたいへんに増えています。感染症防御において、消毒は、個人防護具(PPE)の活用と等しくたいへんに重要で、市民が身を守ることに直結し、それが医療への負荷を大きく下げる結果となります。市民のPPE使用=不織布マスクの着用を嘲笑し、市民はマスクをするなと暴言を吐き続けた権威主義的暗愚医者などは、自分自身の火あぶり用の薪を積み上げていたようなものです。
〈*50年ほど昔、筆者が3年間通園していた延岡カトリック幼稚園(2020/03/31閉園)では、トイレに消毒用手洗い洗面器があり、石炭酸(フェノール)で手を消毒する習慣があった。なお、この洗面器に消毒薬を入れておき手洗いをする方法は、最悪の耐性菌培養槽となり、多剤耐性緑膿菌などによる極めて深刻な院内感染の元凶となったため、前世紀末に全廃されている。消毒薬の手洗い洗面器などでの運用=消毒薬の使い回しは、絶対にしてはいけないことで、使う都度、新鮮な消毒薬を使わねばならない〉
さて、学習権の保障としての学校再開や、個人と集団の感染症防護としてのマスク着用、消毒の励行、社会的距離戦略の徹底は素晴らしことです。ところがここに
知識と考え方のおかしな権威主義者や「善意の人」が潜り込み、横車を入れてくるのが本邦の常で社会の闇です。
これは放置するとけが人や病人、死人を出しかねませんので本稿を緊急で執筆する次第です。
5月25年に安倍晋三首相が緊急事態宣言の全面解除を宣言し*、本邦では7週間ぶりに社会活動の全面的な再開となりました。実際には6月に入ると同時に学校なども動き始めました。この社会活動抑制期間の7週間は、諸外国の実例と比較すると期間としては長くもなく短くもなくといえます。世界では、どの国も社会活動の抑制による弊害に苦しみ、できるだけ期間を短縮しながら軟着陸を模索していますが、一方で合衆国南部から西部にかけてのように拙速な活動再開によってパンデミックが再燃している事例もあります。
〈*
急事態宣言を全面解除、東京など5都道県で7週間ぶり-政府2020/05/25 Bloomberg〉
社会活動の再開は、不特定多数の人間による集団の形成と接触の再開でもあり、そこに未発見の感染者が存在すると感染拡大が生じます。現在、第二波とよばれているspikeやsurgeは、まさにこのためによるもので、世界各国を悩ませています。とくに本邦では、
前回執筆したように
極端なPCR検査の抑制によって感染者分布の実態が把握できていないと考えられますので、感染拡大の発生については個々人の身を守る努力に依存することとなります。従って、個人防護具としての
不織布マスクと消毒薬の必要性が極めて高いものとなります。
幸い、不織布マスクは五月末になると大きく値崩れを起こし、今ではコンビニでも妥当な価格で大量に販売されています。なお不織布マスク全般、とくにN95マスクは、
期限(数年から5年程度)を超過すると繊維構造内部の静電場が失活して見てくれはマスクでも実際には濾過能力が無くなってスッカスカの「殺人マスク」になることが多々ありますので、製造後の経過期間の分からない転売屋などのマスクはいくら投げ売りでも危険です。
不織布マスクは、できるだけ新鮮なものを使いましょう。
一方で、消毒用アルコールは、その需給の正常化が不織布マスクと比較して1カ月以上遅延しており*、筆者の周辺では五月末に店頭に並び始め量はある程度回復しているものの、いまだに価格、品質、種類という面で不安定な状態が続いています。
〈*6月に入り一斗缶入りの工業用アルコールなどの小売りが復活しており、筆者お勧めの
消毒用エタノールIPAも薬局店頭に戻ってきたという報告がある。消毒用アルコールの流通回復は近いと考えて良いだろう〉
そういった中、郵便局などの待合や、大規模小売店舗入り口の手指消毒薬として
黄色い液体の入ったスプレーが登場し、更に商棚にもアルコールと並んで黄色い液体の入った瓶が並ぶ様になりました。価格は500ミリリットルで1200円から2000円程度とかなり高いのですが、アルコール手指消毒薬も同様にまだ高価です。
この黄色い液体(正確には黄色っぽい透明の液体でキッチンハイターに酷似)の入った瓶の中身は、
次亜塩素酸水溶液です。色を見る限り100ppm以上の有効塩素濃度に見えますが、スーパーの店頭で成分表示を見入ると「
HClO」とか、「
安定化次亜塩素酸 安定剤」などと書いてあります。また有効塩素濃度は、100ppm以上という表記のものが多いです。
お値段は前述のようになんと500ミリリットルで1200円から2000円程度で、なかには100ミリリットルで2000円近い代物もあります。そんなにお金を使えたら一升瓶のお酒を買えますので筆者はすごすごと立ち去ることになりました。500円くらいでしたらサンプルとして全種類購入していました。
以前執筆しましたように(
1,
2)
消毒用アルコールの不足は、省庁間の制度・利害調整の失敗によるものです。とくに経産省所轄の一般アルコールは、1リットル当たり千円という重い酒税相当の加算額=課税が免除され、国内に数十万キロリットル流通していますので潤沢にあります。本来、コロナ対策に必要な家庭用消毒薬は、
消毒用アルコールと水回り・吐瀉物用の次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイターなど)の二つでことが足り、双方共に安価かつ国内に潤沢に存在しています。従って、行政、この場合は経産省が流通へきちんと一般アルコールを解放すれば、医療関係者から我々一般市民までの共通した対コロナ基本装備である消毒薬に困ることはないのです。
次亜塩素酸は、たいへんに面白い物質ですが、一般向け消毒薬でなく、あくまで工業用の消毒薬と好事家向けの雑貨に過ぎません。そのようなものが一般向け市場で実際には消毒用途として売られ、
手指消毒に不特定多数の人間に供せられているのは憂慮すべきことです。