Chemist (化学者)としての視点でみると次亜塩素酸は、たいへんに面白い物質で、実験室内ではたいへんに優秀な性能を示します。しかも安価で生産性も良い物質です。
一方で、消費者は思いもしない行動をとりますし、使い方をします。合衆国では、コロナ禍によって家庭用消毒薬(ライソルなど日本のハイターに相当)でうがいをする人、食べ物に混ぜる人、肌に塗る人が大勢現れていてメーカーと地方政府を大いに悩ませているとCNNでは報じられています。この原因に
トランプ大統領の消毒薬発言があると批判されていますが、これで人が死傷すればメーカーの製造物責任問題になります。
一般向け、医療向けの製品、とくに消毒製品は、人の命がかかっていますので
科学的かつ医学的に公的に合意された効能と、標準的な使用方法が確立されねばなりません。これが無ければ、いくら●◎分析センターで効果が確かめられましたと主張したところでそれは紙くずです。消費者の手元で安全且つ確実に効果を発揮する条件が明確かつ公的に合意され公開されねばそれは消毒薬では無く、最悪では殺人製品になりかねません。
業界団体とメーカーが力を合わせて科学的かつ医学的に公的に合意された効能と、標準的な使用方法を獲得し、遵守するのが最低限の企業倫理であって、出発点です。そしてその窓口であり担当が
厚生労働省です。
経済産業省にはその資格はありません。
次亜塩素酸はニセ科学批判の対象としては頻出ですが筆者は、企業倫理、工業倫理問題のど真ん中で、ニセ科学問題は枝葉であると評しています。幹をどうにかせねば、枝葉は無限に生えてくると言う典型的ないたちごっこを起こしているのが現実でしょう。結果、顧問弁護士の居る企業に逆襲されてしまうのは火を見るよりも明らかなことです。
次回は、経産省の委託を受けた独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)による中間報告を用いて具体的に論じます。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ12
<文/牧田寛>